カタール・ワールドカップ(W杯)の準々決勝、オランダ代表vsアルゼンチン代表が9日に行われ、2-2で120分の戦いが終了。その後、PK戦を3-4で制したアルゼンチンが準決勝進出を決めた。

グループA首位通過のオランダはラウンド16でアメリカ代表と対戦。ダンフリースの1ゴール2アシストの圧巻の活躍もあり、3-1のスコアで順当に8強入りを決めた。2大会前のリベンジを狙うファン・ハール率いるチームは、そのアメリカ戦から先発1人を変更。クラーセンに代えてベルフワインをデパイと共に2トップに置き、ガクポをトップ下に移した。

一方、グループCを首位通過したアルゼンチンは前ラウンドでオーストラリア代表と対戦。再三の決定機逸で思わぬ苦戦を強いられながらも、メッシとアルバレスのゴールを守り切って2-1の勝利を収め、決勝トーナメント初戦を突破した。難敵撃破を目指した中5日での一戦では先発1人を変更。パプ・ゴメスに代えてリサンドロ・マルティネスを起用し、オーストラリア戦終盤の[3-5-2]を採用した。

2014年ブラジル大会の準決勝以来の再戦となる両者のベスト4進出を懸けた大一番は、ミラーゲームの形となったことで、序盤から一進一退の攻防となる。

互いにビルドアップの局面ではそこまで強い制限をかけず、ブロックを組んで迎え撃つ対応が目立つ。そのため、両チーム共に要所で相手の守備網をかいくぐってフィニッシュに持ち込むが、なかなか相手GKを脅かすまでには至らず。

前半半ばを過ぎても睨み合いの状況が続く中、やはり均衡を破ったのはアルゼンチンが誇る絶対的エースの左足だった。

35分、相手陣内中央右でボールを持ったメッシが内側へドリブルで運びながら、右ウイングバックのポジションから斜めのランニングでボックス内へ走り込むモリーナへ針の穴を通すかのような絶妙なスルーパスを供給。DFを一瞬振り切ってゴール前に飛び出したモリーナがGKの寸前で右足のシュートをゴール左下隅へ流し込んだ。

メッシの超絶アシストから伏兵モリーナのゴールで先手を奪ったアルゼンチンは、これで受けに回ることなく2点目を目指す。40分にはボックス中央でアルバレスから足元にパスを受けたメッシが鮮やかな反転からシュートに持ち込むが、これは惜しくもGK正面。

一方、前半の内に攻撃の糸口を掴みたいオランダはセットプレーから幾度かチャンスを窺ったが、アルゼンチンの身体を張った守備を前に決定機まで持ち込むことができなかった。

迎えた後半、先に動いたのはビハインドを追うオランダ。ベルフワインとデ・ローンを下げてベルフハイス、コープマイネルスを同時投入し、前線の並びをガクポとデパイの2トップ+ベルフハイスのトップ下という形に変えた。

後半立ち上がりはオランダが勢いを持って入ったものの、前半同様に時間の経過と共に試合は膠着状態に陥る。それでも、攻守両面で集中力とプレー強度を維持するアルゼンチンがカウンターを軸により際どいシーンを作り出す。

そして、63分にはメッシの鋭い仕掛けで得たボックス手前左好位置のFKを名手メッシが直接狙うが、これはわずかにクロスバーの上を越える。

守備は粘るものの攻撃が停滞するオランダは64分にブリントを下げてターゲットマンのルーク・デ・ヨングを投入。攻撃的な[4-2-3-1]に並びを変えた。だが、この交代も攻撃の活性化とはならない。

一方、追加点を奪って試合を決めたいアルゼンチンは一瞬の隙を突いてビッグチャンスを作る。73分、左サイドのボックス付近で仕掛けたアクーニャが巧みな切り返しでダンフリースのファウルを誘ってPKを獲得。ここでキッカーを務めたメッシはポーランド戦での失敗を払しょくする見事なシュートをゴール右隅に突き刺し、W杯通算ゴール数を2桁の大台に乗せた。

これで勝利を確信したか、スカローニ監督はカードをもらっていたアクーニャとロメロに代えてタグリアフィコとペッセージャ、献身性が光ったアルバレスに代えてラウタロ・マルティネスを投入し、交代枠を使い切る。

対して崖っぷちのオランダはエースのデパイを下げてヴェグホルストを投入し、L・デ・ヨングとのツインタワーという力業に攻撃のアプローチを変えると、これが見事に嵌る。

83分、相手陣内右サイドのベルフハイスが早めのタイミングでクロスボールを入れると、ボックス中央にタイミング良く走り込んできたヴェグホルストがゴール左隅へ見事なヘディングシュートを流し込んだ。

このゴールで一気に分からなくなった試合は最終盤にかけてヒートアップ。パレデスのアケに対する危険なタックル、相手ベンチにボールを蹴り込む愚行によって両軍入り乱れる混乱も見受けられた中、オランダは10分が加えられたアディショナルタイムに決死のパワープレーを敢行していく。

すると、最後の最後に劇的ゴールが生まれる。後半アディショナルタイム11分、ボックス手前中央の好位置の場面でFKを得たオランダはこの土壇場でサインプレーを敢行。キッカーのコープマイネルスが壁の横に立っていたヴェグホルストの足元に意表を突くショートパスを送ると、DFを巧みにブロックした巨漢FWが反転からの左足シュートをゴール右隅に流し込んだ。

オランダの驚異の粘りによって2-2のイーブンで前後半の戦いを終えた両者は延長戦に突入。追いついてより勢いがあるオランダだが、前半のバランス重視の戦い方に戻す。これを受け、延長前半は再びアルゼンチンがボールを握って押し返す形となるが、メンバー変更の影響もあって決め手を欠く。

その後、勝負の延長後半ではアルゼンチンが負傷明けの切り札ディ・マリアを投入し、延長戦での決着を目指す気概を見せると、ここから完全にオランダを押し込む。その流れでボックス内のラウタロのダイレクトシュートやエンソ・フェルナンデスのミドルシュートで決定機を創出。だが、シュートがポストを叩くなど最後のところでオランダの守備を崩し切れない。

そして、前回対戦に続き試合の決着はPK戦に委ねられることになった。そのPK戦ではアルゼンチン守護神エミリアーノ・マルティネスが圧巻の活躍。先攻オランダの1人目ファン・ダイク、2人目ベルフハイスのシュートを完璧に読み切って連続セーブ。その後は互いに成功した中、アルゼンチンは4人目のエンソ・フェルナンデスが外して5人目までもつれ込むが、今大会を通じて決定機逸が目立つラウタロが名誉挽回の完璧なシュートを突き刺し、前回対戦に続きアルゼンチンがPK戦を制した。

なお、ベスト4進出を決めたアルゼンチンは13日に行われる準決勝でブラジル代表を破ったクロアチア代表と対戦する。

オランダ代表 2-2(PK:3-4) アルゼンチン代表
【オランダ】
ヴェグホルスト(後38)
ヴェグホルスト(後56)
【アルゼンチン】
モリーナ(前35)
メッシ(後28[PK])