モロッコ代表は、カタールワールドカップで予選リーグから、前回大会ファイナリストのクロアチア代表、FIFAランク2位のベルギー代表らを抑えて、グループF首位通過した。“隣国”スペイン代表と対等に攻撃的なサッカーでPK戦で勝利を掴む。史上初のベスト8進出を成し遂げた。
モロッコ代表の快進撃を支えるのがFWハキム・ツィエク(29歳)だ。モロッコ代表の3トップの右でプレーし、今大会でワールドカップ通算7試合に出場し、モロッコ人選手としては史上最多となった。
【映像】モロッコ、史上初ベスト8進出!若き無敵艦隊を撃破
過去を遡るとオランダ生まれのツィエクは、ユース年代ではオランダ代表として、U-19とU-21のチームでプレーした。2015年6月にオランダ代表監督のフース・ヒディンクがラトビアとのEURO予選でツィエクを招集しようとしたものの、怪我により辞退した。監督との信頼関係など様々な経緯があり、モロッコ国籍を持っていたツィエクは、モロッコ代表を選ぶことを決断し、2015年10月のコートジボワール戦で代表デビューを果たしている。
その後も戦術面と精神面の問題などで度々、モロッコ代表から外されることもあったが、2018年ロシアワールドカップで3試合先発出場するなど、ポジションを掴んでいった。
ツィエクは、所属クラブでもオランダのアヤックスからチェルシーに移籍し、高いテクニックを誇る名手と名を馳せている。
カタールワールドカップでもモロッコ代表として中心的な役割が期待されたが、当時の監督であるハリルホジッチとは折り合いが悪かった。確固たる哲学を持ち、チームファーストなハリルホジッチはツィエクを代表から除外したのだ。それに対してツィエクも代表からの引退も宣言していた。
しかし、ツィエク以外にもモロッコ代表のスター選手追放は世論の反発を招き、モロッコサッカー連盟がハリルホジッチ前監督を解任した。その結果、ツィエクはワールドカップカタール2022に臨む代表メンバーに選出される。
その後のワールドカップ前の強化試合に先発出場してロングシュートをネットに突き刺し、2年ぶりのゴールで健在ぶりをアピールした。
ワールドカップ予選リーグの大一番、ベルギーを2対0で下してツィエクはマンオブザマッチに選ばれた。攻撃面だけでなく、守備面でも非常に貢献度が高く、モチベーションの高さがチームに好影響を与えている。
ツィエクは、「僕はこのMOMの賞に相応しいとは思わない。チーム全員の努力の賜物だよ。チーム全体の仕事が素晴らしかった」とフォアザ・チームを強調した。そこには、ハリルホジッチから指摘された”グループのバランスを崩すような選手”の姿ではなかった。
ツィエクは、ユース世代からサッカーの試合以外でも様々な壁を乗り越えて、モロッコ代表としてワールドカップで躍動している。アフリカ人として初めて8強に導いたレグラギ監督の手腕にも大きな注目が集まっているモロッコ代表。次は、ポルトガル代表との一戦だが、どんな奇襲サッカーを見せてくれるのか。大会屈指のダークホースチームの快進撃を見逃すな。
(ABEMA/FIFA ワールドカップ カタール 2022)