1カ月足らずで気温もかなり変わる

冬至が近くなり、カタールも日が落ちるのがだいぶ早くなって気温も開幕当初よりグッと下がってきた。移動に使っているバスはこれまで必ず冷房が効いていたが、ラウンド8のクロアチア×ブラジルが行われた日は曇り空で風もあり、エデュケーションシティ・スタジアムから出たバスは空調を動かしていなかった。冷房ではなく、ときと場所によってはいよいよ暖房が必要となってきている。

 今大会は8つの会場が近距離にあるため、すべての会場に行くことができた。砂漠に浮かぶテントのようなアル・ベイト・スタジアム。974個のコンテナで作られたスタジアム974。ザハ・ハディッドの設計によるアル・ジャヌーブ・スタジアムなどそれぞれ特徴があるなか、空調設備にもオリジナリティがあった。ハリファ国際スタジアムのようにスタンド最上部に吹き出し口が設けられていたり、座席の下から足元に吹き込んだりである。なかには、足元、背中と身体全体に吹き込む会場もあった。

スタンド最上部の丸い吹き出し口は中継に映ることもあり、目にした方が多いと思う。重厚な作りに見えるが、あの丸い吹き出し口はバスの座席上についているのと同じで手動で動かすことができ、たまにスタッフが向きを変えている。「あれ、直接冷たい風が来るな?」と思ったら、善意でこちらに向けられていたりする。何回か通えば特長がわかってきて、「今日はハリファ国際スタジアムだから上着が必要」など対応できるようになっていった。

グループステージ第2戦の日本×コスタリカは13時キックオフでアフメド・ビン・アリ・スタジアムで行われた。外気温は高く、ピッチには燦燦と陽ざしが照り付けていた。一方で、このスタジアムは背面2か所から冷気が来る設計で、スタンドでは暑さを感じなかった。冷房の有難さが身に染みた一戦で、11月27日のことだった。

あれから10日以上が過ぎ、日本はラウンド16でクロアチアに競り負けて姿を消し、そのクロアチアは準々決勝でブラジルをも破った。4強が出揃ったカタールW杯は、3位決定戦も含めて残り4試合となった。季節は変わり、冷房よりも暖房がほしい気候となっている。イングランド×フランスは北部の都市アル・ホールにあるアル・ベイト・スタジアムで行われたが、私も含めてダウンを着ている者が多かった。

クロアチア、アルゼンチン、モロッコ、フランス。ベストに残った4カ国は、この地に1か月以上滞在して全7試合を戦うことになる。勝ち上がるためには、ピッチの上はもちろん、それ以外でもいろいろとタフじゃないと戦い抜けない。W杯は常にそういうものだが、とくに今大会はそうなのではないかといま実感している。

文/飯塚 健司(ザ・ワールド編集ディレクター)