王者フランスへ立ち向かうも2失点で敗戦

 カタール・ワールドカップ(W杯)準決勝のフランス代表対モロッコ代表の一戦は、2-0でフランスが勝利。攻撃的なサッカーを展開して、何度もフランスゴールに迫ったモロッコは、ゴールを奪うことはできなかったものの強烈なインパクトを残した。

 モロッコがかつてフランスの植民地だったことから、「支配された国」と「支配した国」という因縁もあった両国の対戦。フランスの国歌斉唱の際には、スタンドの9割を埋めたモロッコサポーターからブーイングや口笛も飛び、試合中にもフランスがボールを保持すると容赦ないブーイングが浴びせられた。

 そうした状況でも、フランスは前半5分にDFテオ・エルナンデスがジャンピングボレーでゴールネットを揺らす。後半は1点を追うモロッコがフランスを攻め立てたが、2センターバックとGKウーゴ・ロリスのトライアングルが強固だったフランスが、最後のところでゴールを割らせない。

 そして、後半20分のFWマルクス・テュラムの投入を合図に、カウンターを仕掛け始めると、最後はFWキリアン・ムバッペが細かいボールタッチで密集の中からチャンスを作り、途中出場のFWランダル・コロ・ムアニがファーストタッチでゴールを決めた。

 2-0とリードを広げられてからも、モロッコは攻撃を仕掛ける。サポーターも国旗を広げてチームを後押ししたが、最後の最後までフランスのゴールは割れなかった。それでも死力を尽くして90分間、戦い抜いたモロッコの選手たちには、モロッコのサポーターから熱い拍手が送られた。それだけなら良くあることだが、試合終了間際、後半アディショナルタイムには、記者席でも多くの記者が立ち上がり、健闘を称える拍手を送った。

 今大会屈指の名勝負となった一戦を終えて、モロッコは3位決定戦に。フランスは決勝に勝ち進んだ。連覇を目指すフランス、そして初の3位入賞を目指すモロッコは、それぞれの次の戦いでも、勝利に向けた戦いを繰り広げてくれるはずだ。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)