FIFAワールドカップ・カタール2022の準決勝が12月15日(日本時間)に行われ、フランス代表とモロッコ代表が対戦した。
前半5分、フランス代表のFWキリアン・ムバッペがペナルティエリア内でシュートを放ち、こぼれ球にDFテオ・エルナンデスがジャンピングボレーで反応。ゴールエリア左隅から放たれたこのシュートがゴールネットに突き刺さり、同代表が先制した。
後半34分にも、ムバッペのシュートのこぼれ球を途中出場のFWランダル・コロ・ムアニが押し込み、勝負あり。最終スコア2-0で勝利したレ・ブルーが、2大会連続の決勝進出を確定させている。
モロッコ代表の猛攻を浴びる時間帯もありながら、フランス代表がいかに試合をコントロールしたのか。ここではこの点について解説する。
中央封鎖守備が先制点に繋がる
キックオフ直後より、基本布陣[5-4-1]のモロッコ代表がボールを保持。アクラフ・ダリ、ロマン・サイス、ジャワド・エルヤミクの3センターバックと、ソフィアン・アムラバトとアゼディン・ウナヒの2ボランチが自陣でパスを回し、フランス代表の出方を窺った。
対するレ・ブルーは、準々決勝のイングランド戦でも見せたムバッペ、アントワーヌ・グリーズマン、オリビエ・ジルーによる中央封鎖守備を今回も披露。まずこの3人が中央のレーンやハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、左右の内側のレーン)に立ちはだかり、相手最終ラインからの縦パスを封じる。加えてジルーがアムラバトを、グリーズマンがウナヒを適宜マークしたことで、モロッコ代表のビルドアップを手詰まりにさせた。
前半4分、レ・ブルーがモロッコ代表のパスワークを右サイド(フランス代表にとっての左サイド)へ追いやり、スローインを獲得。ここから最終ラインでパスを回し、ボールを逆サイドへ運ぶと、ラファエル・バランがセンターサークル付近から前線に縦パスを送る。このパスに反応したグリーズマンが中盤へ降りると見せかけ、エルヤミクの背後を突いたことでチャンスが生まれた。その後のグリーズマンのペナルティエリア右隅からのクロスが、ムバッペのシュートとエルナンデスのゴールに繋がっている。
巧みな動き出しでチャンスを作ったグリーズマンはもちろんのこと、FWユセフ・エン・ネシリのプレスや相手の中盤の横スライドが遅れた隙を突き、縦パスを繰り出したバランも称えられるべきだろう。スローイン獲得に繋がった、アタッカー陣による中央封鎖も見事だった。
モロッコ代表のワリド・レグラギ監督が負傷したサイスを交代させ、布陣を[4-1-4-1]に変えた前半21分以降も、フランス代表は堅固な中央封鎖守備を披露。同35分にはジルー、グリーズマン、ユスフ・フォファナの3人でセリム・アマラーを囲み、センターサークル付近でオーレリアン・チュアメニがボールを回収。同選手がボールを敵陣へ運び、ムバッペにスルーパスを送ったことで決定機が生まれた。
この攻撃シーンの直前にも、ジルー、グリーズマン、ムバッペが中央を封鎖し、相手最終ラインからのパスをサイドへ誘導している。サイドから中央に戻ってきたボールを、チュアメニとフォファナの2ボランチが狙うという約束事も、試合全体を通じて徹底されていた。
センターサークル近辺でボールを奪いきれない場面では、グリーズマンが自陣後方へ降りて守備対応。この試合で両軍の選手中最多のキーパス(4本。味方のシュートに繋がったパス。数値はデータサイト『Sofascore』より)を叩き出したレ・ブルーの背番号7は、時折自陣ペナルティエリアまで下がるなど、守備面でも気を吐いた。
後半2分には同選手がハーフウェイラインから帰陣し、アマラーからボールを奪う。直後の同選手からエルナンデスへのパスがロングカウンターの起点となっている。この試合に限らず、今大会ではグリーズマンの攻守両面における献身性が光っており、これは今のフランス代表の大きな武器だ。
前述の中央封鎖に加え、グリーズマンを[4-4-2]の2列目に組み入れての撤退守備も板についてきたレ・ブルーが、決勝でリオネル・メッシ擁するアルゼンチン代表をも手玉に取るかもしれない。