今大会はモロッコに再現の可能性があったが……

残念ながらFIFAワールドカップ・カタール大会での冒険はベスト4で終わったが、ダークホースとなったモロッコ代表を支えてきたのが堅い守備だ。準決勝のフランス戦前の段階で失点をオウンゴールのみの1点に抑えており、全員のハードワークを軸とした守備は試合前から話題を呼んでいた。

しかしフランス戦では疲労もあったのか、0‐2で敗北。失点1のままファイナルへ辿り着くことは出来なかった。

これを受けてスペイン『as』が過去のデータを振り返っているが、ワールドカップの歴史上最も少ない失点数でファイナルへ辿り着いたチームは4チーム存在する。いずれも1失点で、1966年大会のイングランド代表、1974年大会のオランダ代表、2002年大会のドイツ代表、2006年大会のイタリア代表だ。

このうち優勝したのはイングランドとイタリアだが、中でも印象的なのは2006年のイタリアだ。当時のイタリアは今回のモロッコと同じく、オウンゴールの1失点のみでベスト4まで勝ち上がってきていた。

ベスト4の相手は開催国ドイツだったが、これを延長戦の末2-0で撃破。決勝のフランス戦は1-1からのPK戦で勝利を収めたが、この1失点もジネディーヌ・ジダンに決められたPKによるものだった。大会を通じてイタリアはオウンゴールとPKによる2失点のみで大会を制したのだ。

カテナチオが1つの代名詞であるイタリアらしい優勝とも言えるが、当時のイタリアにはGKジャンルイジ・ブッフォン、DFファビオ・カンナバーロ、マルコ・マテラッツィ、ジャンルカ・ザンブロッタ、ファビオ・グロッソ、MFジェンナーロ・ガットゥーゾ、ダニエレ・デ・ロッシら守備のスペシャリストが揃っていた。DFアレッサンドロ・ネスタもメンバーだったが、怪我の影響で決勝トーナメントは出場できなかった。それでも2失点にまとめて優勝してしまうのだから、いかに当時のイタリアが堅かったのか分かってくる。

今となっては2大会続けてFIFAワールドカップ出場を逃してしまっており、この2006年大会以降は苦しい時間が続いている。イタリアだけでなく、世界中のサッカーファンが16年前の強さを取り戻してほしいと感じていることだろう。

今大会ではモロッコが当時のイタリアと同じオウンゴール1失点のみでの勝ち上がりとして注目されたが、その記録もベスト4で途切れた。そう考えると、2006年大会のイタリアの堅守はFIFAワールドカップ史上最も安定していたと言っても大袈裟ではないはずだ。