【ドイツ発コラム】カタールW杯敗退後、豪華なメンバーを招集して分析と対策

 ドイツ代表復活に向けて、ドイツサッカー界の重鎮が集結する。

 カタール・ワールドカップ(W杯)では日本代表、スペイン代表、コスタリカ代表と同組になったグループリーグを突破できず、2大会連続早期敗退となったドイツ代表。大会後にはいろんな問題点が噴出しては、ファンやメディアに攻撃されている。

 危機感がないわけがない。

 18年ロシアW杯のグループリーグ敗退はある意味“自滅”だ。W杯優勝国として連覇を目指した準備をしてきたつもりが、どこかで助長してしまい、自信や誇りが油断やおごりになってしまった。チーム内での人間関係も良好だったとは言えず、ヨアヒム・レーブ監督が絶大な信頼をしていた主軸組は、本来のパフォーマンスをまるで発揮できないまま終わった。

 そんな反省を基に、今度こそはと臨んだカタールW杯だっただけに、優勝争いどころか、決勝トーナメント進出さえもできないとはさすがに想像もしていない事態だったことだろう。

 このままではいけない。なにより24年6月にはドイツで開催される欧州選手権(EURO)が控えている。残された時間はわずか1年半。手をこまねいている時間などはない。

 大会後の分析も早急に行われた。敗退からわずか1週間後には、ハンジ・フリック監督がドイツサッカー連盟(DFB)会長ベルント・ノイエンドルフ、副会長ハンス=ヨアヒム・ヴァツケに、今大会の振り返り、敗因、問題点、今後に向けてのプランを発表した。

 18年間、代表ディレクターとしてフリック監督とも密に携わっていた元ドイツ代表FWのオリバー・ビアホフが責任を取って辞任したことで、フリックの去就には注目が集まっていたが、会談後には続投が発表されている。

「ハンジ・フリックは24年EUROに向けて万難を排して立ち向かおうとするエネルギーを感じた」(ヴァツケ)

 とはいえ、やるべきことは多い。フリック1人でなんとかなるわけではない。DFB内部でもさまざまな分析と対策を練ろうとしているが、内部だけでは見えてこないもののたくさんある。そこで外部からタスクフォースチームを招集。その面々が凄い。

オリバー・ミンツラフ(レッドブルグループ・マネージングディレクター)
カール=ハインツ・ルンメニゲ(元バイエルン代表取締役)
マティアス・ザマー(元DFBスポーツディレクター)
オリバー・カーン(バイエルン代表取締役)
ルディ・フェラー(元レバークーゼンスポーツディレクター)

 ドイツが誇るそれぞれの専門家が集う。

「ドイツ代表はバイエルンよりも大事な存在だ。私自身、現役時代ドイツ代表としてプレーすることがどれだけ誇り深いことだったか」(ルンメニゲ)

ドイツで開催される24年EUROが1つの目標、気がかりとして残るのは?

 ノイエンドルフDFB会長はタスクフォースチームに何を求めているのだろう。こう説明していた。

「ドイツサッカー界の構造が最適な状態なのか、重点的に取り組むところはなんなのか、将来的にどのように整備されなければならないのか。自己批判的に1つ1つにメスを入れて考える。そのための話し合いをしたい」

 それぞれがどんなビジョンを持っているのか。どんなアイデアをもたらすべきなのか。すでにフランクフルトのDFBキャンパスで最初の顔合わせは終わっている。

「カタールW杯における失望の敗退を受けて、これからの道と可能性について、特にドイツで開催される24年EUROで再び成果を上げるために、どうすべきかを話し合った。冷静さを保ちながら、可及的速やかに進めていきたい」

 冬休みを経て1月以降、活動は再開される模様だ。気がかりとして残るのは、代表ディレクターのポストはまだ空席だということだろう。これまでビアホフが手掛けていた役割は非常に多岐にわたっていた。いや、多岐すぎた。ドイツ代表に関してだけではなく、新設されたDFBアカデミーやキャンパスに関して、育成年代・指導者育成に関して、さらにはドイツサッカー協会における経営プラン、各カテゴリーにおける人事関連など、さまざまな決断をしなければならなかった。

 DFBでは役割を分業化することで、それぞれのタスクを明確なものにしようとしている。それこそメディアではDFBチームダイレクター候補にヘルタベルリンでCEOを務めるフレディ・ボビッチ、DFBアカデミーダイレクターには元アーセナル育成ダイレクターのペア・メルテザッカーの名前が挙がっているが、ノイエンドルフは「具体的な名前を挙げてのディスカッションはまだされていない」と慎重な姿勢を崩していない。

 昔からドイツは話し合いに時間がかかる。それはさまざまなポイントをどこまでも掘り下げて、詳細までまとめ上げるからだ。そのための忍耐力には計り知れないものがある。抜かりなく準備をして、スタートしたら、全力で取り組んでいく。2000年の育成改革もそうだった。

 果たして、ドイツはどのようなリスタートを切るのだろうか。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)