今年も残すところあと2週間を切った。本稿では、2022年のサッカー界における名場面を『サッカーダイジェストWeb』のヒット記事で振り返る。今回は、セレソンOBの元鹿島指揮官が日本対ブラジルについて語った記事を再掲する。
記事初掲載:2022年6月8日
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日本代表は6月6日に国立競技場で行なわれたキリンチャレンジカップ2022で、FIFAランク1位のブラジル代表と対戦。再三ピンチを作られながらもよく耐えていたが、77分にネイマールにPKを決められ、0-1で敗れた。
この一戦の日本の戦いぶりを、ブラジル側ではどう見ているのか。かつて柏レイソルでプレーし、鹿島アントラーズで指揮も執った元ブラジル代表DFのアントニオ・カルロス・ザーゴ(現クラブ・ボリバル指揮官)に印象を訊いた。
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日本対ブラジルの試合を見て、まず何よりも守備に偏った日本のプレーに驚いた。9人、いや時には10人で守り、ただブラジルにゴールをさせないためだけにプレーしているような印象を受けた。
10人で守ると相手に与えるプレッシャーは大きいが、いつでもそれが成功するわけではない。一度ボールを奪われればカウンターで点を取られる危険性が常にある。それに「絶対に失点したくない」という気持ちがあまりにも強くなると、選手は心理的にナーバスになり、結果としていいプレーができないケースが少なくない。その結果が、ファウルの連発だったのではないだろうか。
敵を困難に陥れる、日本の疲れ知らずの運動量は素晴らしかった。おかげで、ブラジルはトップクラスの強豪を相手にするように対峙するしかなかった。ただ、それを止める日本の武器が、危険なファウルというのはいただけない。
スタッツではファウル数は19回だったが、私の感覚ではそれ以上だった気がする。こうした危険なプレーをするチームをこれまで何度も見てきたが、まさか日本がそんなプレーを連発するとは思わなかった。これまで、日本は危険なプレーをするようなチームではなかった。
ブラジルのような強い相手を迎える試合こそ、柔軟に、頭を冷やし、落ち着いて対処していく必要がある。森保(一)監督はそういうことを選手に教えていないのだろうか。ワールドカップでスペインやドイツを相手に戦わなければいけない日本にとっては、一番肝心なところであると私は思う。
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選手個人では、中山(雄太)、南野(拓実)、長友(佑都)と私のよく知っている選手もいた。遠藤(航)は効いていたし、伊東(純也)のパフォーマンスは悪くなかった。そしてなにより、最も印象に残った選手はGKの権田(修一)だ。ブラジルは5つのシュートが枠内に飛んだが、彼がよくそれを守っていた。失点を1に抑えられたのは彼の活躍も大きいだろう。ただ彼等だけでは残念ながら何もできない。
全体的に見て、日本はバランスが悪かった。「みんなで守り、みんなで攻める」では、戦術が何もないのと一緒だ。その点ブラジルは、ネイマールが守備に入ったり、ダニエウ・アウベスが攻め上がる時はカゼミーロがカバーしたりと調和した動きがとれていた。
思うに、日本代表にはピッチ内に真のリーダーがいないのではないか。セレソンは、ネイマールやチアゴ・シウバが一声かければ他の選手はその指示に従う。そういう指示系統がうまく機能していなかったようにも見える。命令を下せるのは森保監督なのかもしれないが、残念ながら彼はピッチに入れない。
とにかくワールドカップまでにはまだ半年近く時間がある。今回見えた問題点を改善していくことはまだ可能だろう。
最後に、国立競技場でブラジル代表がプレーする姿を見られたのは嬉しかった。あいにくの雨だったが、それでもピッチコンディションはパーフェクトであるように見えた。
取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子