アルゼンチン代表の36年ぶり3度目の優勝で幕を閉じたカタール・ワールドカップ。各国のスタープレーヤーたちが躍動し、大会を大いに盛り上げた。本稿では、芸能界屈指のサッカー通で知られる平畠啓史氏に、ベストイレブンを選定してもらった。

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 GKはドミニク・リバコビッチ(クロアチア)。PKは運か? 実力か? なんて議論があるようだが、その前にリバコビッチの実力を讃えるべき。キーパーの重要性を再認識する大会となったが、そのなかでもインパクト十分な活躍。PKだけでなく、準々決勝のブラジル戦ではブラジルの20本のシュート、枠内シュート10本を1失点に抑える活躍。クロアチアの3位に彼は欠かせない選手だった。

 右サイドバック(SB)はヨシップ・ユラノビッチ(クロアチア)やデンゼル・ドゥムフリース(オランダ)も良かったが、攻守両面でハイパフォーマンスだったモロッコのアシュラフ・ハキミ。守備はもちろん、ハキム・ジイェフ、アゼディン・ウナヒの3人でのコンビネーションは抜群。狭いエリアでも簡単にボールを失わず、3人で巧みにボールを動かしながら、相手の左サイドを見事に打開した。

 左SBにはイバン・ペリシッチ(クロアチア)。186センチで得点力もあり、個でもコンビネーションでもサイドを崩すことができる攻撃的な選手が、試合状況によってSBでもプレー。勝利のために必要なプレーをどのポジションでも遂行できるプレーヤーがいることもクロアチアの強みとなった。

 センターバック(CB)はクリスティアン・ロメロ(アルゼンチン)とヨシュコ・グバルディオル(クロアチア)。ロメロはディフェンスラインに安定感をもたらし、アルゼンチンの優勝に大きく貢献。そして、グバルディオルは今大会で最も注目を浴びたCBと言っても過言ではない。20歳のCBがこの先どんなプレーヤーになっていくのかが楽しみで仕方がない。
 
 中盤はトリプルボランチ気味で、右からロドリゴ・デ・パウル(アルゼンチン)、中央にソフィアン・アムラバト(モロッコ)、左にオーレリアン・チュアメニ(フランス)。アムラバトの献身性は感動的。危険なエリアをカバーし、時には身を挺して相手の攻撃を食い止めた。デ・パウルのカバーエリアの広さも尋常ではない。戦う意志をずっと出し続ける姿は戦士のようだった。相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪い、ラストパスも出せるチュアメニも素晴らしいパフォーマンス。イングランド戦のミドルシュートも見事だった。

 他では、タイラー・アダムス、ユヌス・ムサ、ウェストン・マッケニーのアメリカの中盤も良かったし、独特な空気感のアドリアン・ラビオ(フランス)、高い技術を遺憾なく発揮したウナヒ(モロッコ)、ルーカス・パケタ(ブラジル)のプレーは攻守に効果的で気が利いていた。

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 トップ下にはアントワーヌ・グリーズマン(フランス)。決勝では輝く前に交代となったが、それまでのパフォーマンスはMVP級。攻撃センスだけでなく献身的な守備でも大きく貢献。フランスを攻守両面で牽引していた。

 前線はツートップということにするが、お好きなところに立ってください(笑)。得点王のキリアン・エムバペ(フランス)とMVPのリオネル・メッシ(アルゼンチン)。活躍を期待されて、期待以上の活躍を見せた2人は正真正銘のスーパースター。

 エムバペのスピードそしてシュートは異次元。爆発的なスピードを出せるだけでなく、最高のブレーキも兼ね備えている。決勝でのハットトリックを見ることができただけでも幸せだし、フランスの2点目のワンツーからのゴールは唖然としてしまった。
 
 そして、メッシは文句なしのMVP。メッシがゴールした後のアルゼンチンサポーターの姿を見れば、メッシがどれだけ偉大かが分かる。メッシのゴールに歓喜の声をあげ、涙を流し、ひれ伏し崇め奉る。スタンドの人たちの様子を見て、メッシの“神の子”なんて形容は間違っている気がした。メッシは“神”なんだ。

 アルゼンチンそしてメッシのためにデ・パウルやエンソ・フェルナンデスやアレクシス・マク・アリステルが献身的に走り、闘志を剥き出しにして闘う。メッシを信じて闘った者が救われ、報われた。走行距離なんてどうでもいい。常時守備をする必要なんてない。なぜなら、メッシは優勝に導いてくれる“神”だからだ。決勝終了後のメッシの笑顔が忘れられない。カタール大会がまた一つ記憶に残るワールドカップになった。

文●平畠啓史