大会中にドイツを引っ張るリーダー性を感じさせた
グループステージ敗退には終わったが、FIFAワールドカップ・カタール大会で一番成長した選手はバイエルン所属のドイツ代表MFジャマール・ムシアラ(19)ではないだろうか。元より才能豊かな選手ではあったが、どこかカタール大会中に覚醒したように見えるところがあった。
何よりの驚きは突破力だ。グループステージ初戦でドイツと戦った日本代表もムシアラのドリブルには手を焼いていたが、緩急のつけ方が上手い。スピードでぶち抜くというよりは、リオネル・メッシのようにDFのタイミングを巧みに外して密集エリアを突破してくるイメージだ。左サイドからペナルティエリア内までドリブルで横断されるシーンもあり、日本のDFもなかなか飛び込めなかった。
数字を見てみると、FIFAワールドカップ・カタール大会のドリブル成功数ランキング第2位にムシアラの名前がある。1位はフランス代表FWキリアン・ムバッペで25回、2位がムシアラで19回、3位がアルゼンチン代表FWリオネル・メッシで15回となっており、グループステージ敗退で3試合しかこなしていないムシアラが2位に入っているのは驚きだ。
異常だったのはグループ最終戦のコスタリカ戦で、ムシアラはこの試合だけで13回もドリブルを成功させている。グループ突破へ絶対負けられない一戦だったこともあり、ムシアラも何とかしなければと気合が入っていたのだろう。期待の若手との枠を飛び出し、ドイツ代表を引っ張っていこうとする責任感が芽生えたようにも見えた。この大会でムシアラが得たものは大きいだろう。
独『Bavarian Football Works』は、そんなムシアラをセンターフォワードの位置で起用してはどうかと提案している。基本は2列目で輝く選手だが、まだ19歳。様々なポジションを試す時間はある。
偽9番は現代のトレンドから離れるものかもしれないが、ムシアラが最前線で更なる覚醒を遂げる可能性もゼロではない。いずれにしても、今後のドイツ代表はムシアラを中心に攻撃を作るべきだろう。ムシアラの個性を最大限活かせるポジションで起用していくべきで、それはバイエルンも同じだ。ムシアラこそドイツ代表が再びFIFAワールドカップ制覇を狙ううえでのキーマンであり、代表監督ハンジ・フリックはEURO2024へ最適解を見つけなければならない(数字は『WhoScored』より)。