カタール・ワールドカップで劇的なラウンド16進出を決め、韓国国内を熱狂の渦に巻き込んだ代表チーム。4年半の長期に渡って彼らを率いたのが、ポルトガル出身のパウロ・ベント監督だった。

 しっかりと結果を残した指揮官だが、契約延長を切望するファンの想いとは裏腹に、ワールドカップ終了後にあっさりと退任してしまう。契約期間満了に伴うものと報じられたが、今回、ベント前監督がポルトガル全国紙『Record』のインタビュー取材に応じ、延長交渉の舞台裏を明かした。

 今年4月の段階で、大韓サッカー協会(KFA)はワールドカップ終了後の契約延長に関して前向きな姿勢を見せていたという。53歳の元ポルトガル代表MFは「KFAは私とスタッフに寄り添ってくれていると感じていたが、その後の契約延長交渉で問題が起きた。延長は延長なのだが、期間のところで意見の相違があったんだ」と説明する。

 ベント前監督は、代表チームはワールドカップでの躍進を最終目標に4年単位で強化を図るべきものと考え、契約延長の条件を2026年の北中米(アメリカ、カナダ、メキシコの共催)ワールドカップ終了までと決めていた。

 しかしKFAは9月になって方針を転換。「契約期間を2023年のアジアカップまでとして、そこでの結果とチームパフォーマンスを鑑みて、さらに3年を追加するかどうかを検討させてほしい」という内容に変えてきたのだ。

 インタビュー動画で淡々と話すベント前監督だが、当時の内心は穏やかではなかっただろう。「11月、ワールドカップ開幕前になってもKFAのオファーは変わらなかった。だから私は、チームを去るべき時が来たと決断した。そしてブラジル戦(ラウンド16)の後、正式にKFAに返事をしたんだ」と振り返った。となると退任は既定路線ではなく、続投に意欲を示していた、大会終了間際まで折衝が続けられていたことになる。
 
 とはいえ、ポルトガル人指揮官は韓国への敬意を忘れない。「4年半の間、携わってくれた韓国の人びとは本当に素晴らしい仕事をしてくれた。代表選手たちを含めて、すべての人に感謝している」と語り、「何より悲しかったのは、ずっと応援してくれた韓国のファンに別れを告げなければならなかったことだ」と付け加えた。

 気になる今後については、「何も決まっていない。代表だとかクラブだとか、特にこだわりはないよ。ただ、良いオファーが来るのを待ちながらも、少し休ませてもらおうかな」と答え、笑みを浮かべた。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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