昨年4月に韓国サッカー界を激震させた“兵役逃れ”スキャンダルが、急展開をみせている。

 渦中の人物となってきたのが、元韓国代表の長身FWであるソク・ヒョンジュンだ。フランス2部リーグのトロワに在籍していた当時、29歳(現在は31歳)だったソクは、韓国の兵役庁から早急に帰国して兵役義務を果たすように再三勧告されていたが、ことごとくを無視。フランスに滞在し続け、しかも同国への帰化申請の準備に入ったと報じられると、韓国国内で大バッシングを浴びるに至った。

 韓国において成人男子は、基本的に28歳までに兵役を履行しなければならない。スポーツ選手の場合は五輪でのメダル獲得、アジア大会での金メダル奪取のどちらかを果たせば、免除される特別ルールがあるが、実現はきわめて稀だ。ちなみにソクは2016年のリオ五輪にオーバーエイジ枠で出場したが、メダルを獲得できなかったため、兵役免除は果たせなかった。

 そんななか、ソクとトロワは今年7月に1年残っていた契約を解除することで合意した。無所属となったソクはようやく帰国し、現地12月30日にSNSを更新すると、警察と検察官の取り調べを受けている事実を明かしたのである。

 長文に及んだ投稿で、次のように身の潔白を訴えている。

「まずみなさんに、私の兵役を巡る件に関して深く謝罪したい。今日、事情聴取を終えて、この問題は裁判所に送られ、私は公判を待っている状況です。兵役逃れと帰化について、さまざまな情報が流れていましたが、すべてが違う、事実無根です。逃げるつもりなどなく、私の心と思想は変わらない。ずっと兵役義務を全うしようというものでした」

 ソクによれば、昨年4月の時点で兵役庁から勧告文書が届いた際、彼はすぐに所属クラブのトロワに相談した。兵役服務を果たしながら、サッカー選手も続けられる金泉尚武FC(韓国Kリーグ2部)への移籍を視野に入れていたが、トロワ側はこれを拒否。残る契約期間を盾に違約金の支払いを求めてきたという。ソクは「まるで協力してくれなかった。韓国からの勧告を無視したのは彼らで、私は韓国に戻って尚武に入団する機会を逸してしまったのです」と説明する。

 そしてこの夏、クラブ側とは契約解消でまとまり、ようやく事態が解決に向かう。ソクは「いまは兵役服務を完了させたい気持ちでいっぱいだ」と語ったうえで、「不必要な誤解をたくさん与えてしまったのは、自分が無言を貫いたから。何も明確な回答ができないのでしょうがなかったとはいえ、本当に申し訳なかったと思います」と謝罪した。
 
 ソク・ヒョンジュンは18歳で欧州へ渡り、アヤックス(オランダ)やポルト(ポルトガル)にも籍を置いた。年代別の韓国代表にも常に名を連ねたエリートだったが、A代表には2018年11月を最後に招集されていない。2021ー22シーズンのトロワでは怪我もあってリーグ戦わずか9試合の出場にとどまり、ゴールはゼロ。後半戦はベンチ入りも果たせない状況で、実際のところは戦力外通告を受けた格好だ。

 今回、決死の弁明を試みたものの、韓国国内の風当たりは依然として強い。金泉尚武FCでのプレーが許されたとしても、当面は厳しい批判に晒されそうだ。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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