どこの世界にも「古き良き時代」と表現されるエピソードがある。将棋の世界でいえば、対局中の棋士はかつて自由に外出もし、戦いの最中に会話することもあった。何かとおおらかな時代だったからこそ、後々語られるおもしろい話もたくさんある。初代の竜王となった島朗九段(58)が今でも鮮明に覚えているのが、第2期竜王戦七番勝負で、羽生善治九段(51)と戦った時のこと。持将棋もあり、七番勝負ながら第8局にまで及んだ激戦は、当時の羽生六段が19歳3カ月で初タイトルを獲得することになったが、この名勝負の裏では、対局者の2人を含めて関係者たちで「モノポリー」に興じる、といったことがあった。