DXで八百長も防止?税収増も? 米国で急成長する「スポーツベッティング」、日本展開の可能性は
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 14日、アメリカ最大のスポーツイベント、NFL(アメリカンフットボール)の優勝決定戦“スーパーボウル”が開催された。実は今、NFLをはじめMLB(野球)、NBA(バスケットボール)など、人気競技のスポーツベッティングが拡大を続けている。

【映像】試合展開も対象に スポーツベッティングに世界が注目「まさにDXの申し子」

■“税収増の切り札”…合法化に向け動くアメリカ

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 元プロ野球選手で、福岡ソフトバンクホークスの取締役を務めた経験を持つ小林至・桜美林大学教授は「要するに“コンテンツの魅力向上”ということで、収益が直接スポーツ団体に入ることはないが、例えば今回のスーパーボウルの場合、賭金が8500億円ぐらいに達している。日本の中央競馬の有馬記念が500億円だから、いかにすごい額か、ということだ」と話す。

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 スポーツベッティングが2018年に解禁されたアメリカでは、すでに50州中30州で合法化され、事業が始まっている。残る20州のうち、3州はこれから事業が開始され、7州は合法化が検討されている。

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 「もともとアメリカはギャンブルに非常に厳しい国で、実質可能なのはネバダ州とネイティブアメリカンの居住区のみ、とりわけスポーツベッティングについては4大プロスポーツ(NFL、MLB、NBA、NHL=ホッケー)と大学スポーツの元締めであるNCAA(全米大学体育協会)が“絶対反対”という立場を取ってきた。それを崩したのが、ニュージャージー州政府だ。税収増の切り札として、禁止をしている合衆国連邦法は違法であると訴えた。そして2018年、連邦最高裁での判決を受けて解禁された。税収の問題は他の州にもあったし、ヨーロッパでは解禁されていたので、国民がブックメーカーを通じて賭けていた。もう反対したって仕方ないし、だったらちゃんと合法化して管理せざるを得ない、という趨勢もあった」。

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 カリフォルニア州に住むプロポーカープレイヤーのトシさんは「カリフォルニアでは完全合法化されているわけではないが、4時間くらいで行けるラスベガス州では購入が可能だし、オンラインもある。大手スポーツ専門チャンネルESPNにもサイトの広告は出ているし、今回スーパーボウルについても、一部のローカル局には広告が出ていた。カリフォルニア州でも合法化に向かう形で動き出していると思う」と期待する。

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 実際、コロナ禍では「オンラインベッティング」がひときわ注目を集めており、中でもトシさんはプレー内容や展開を予測する「ライブベッティング」について「ただ強い・弱いだけではなくてチーム同士の相性もある。競馬と一緒で、選手についてのことなど、色々調べることでプラスになることが多い」と話す。

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 トシさんの話を聞いた紗倉まなは「スポーツもギャンブルもあまり詳しくないが、いろいろな賭け方を提示されれば、過去の試合を見てみたり、選手のことを調べようと思うきっかけになると思うし、知る楽しさ、観る楽しさが増えるのではないか」、テレビ朝日平石直之アナウンサーは「勝敗だけじゃないということは、見ている側にとっては“消化試合”が無くなって、優勝は他のチームに決まったからいいや、みたいなことも無くなるのではないか」と話した。

■“表”にし、ネットを使うことでクリーンに?

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 とはいえ、日本では公営競技(競馬、競輪、競艇、オートレース)を除き、ネット上も含めて賭博は原則的に違法行為にあたる。そこで先月末には民間企業30社らがデータ活用やベッティングなどで、スポーツの収益拡大を目指す協議会を設立。年間7兆円に達するとの試算もあるスポーツベッティングの合法化に向けた動きも見え始めている。

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 競馬ファンのカンニング竹山は「僕はNFLも大好きで、スーパーボウルもメチャクチャ面白い試合だったから、賭けられるとしたらものすごく興奮すると思うし、日本でもスポーツベッティングをやるべきだと思う」と話す。「実は日本は世界一といっていいくらい、博打ができる国だと思う。全国各地に公営競技があるし、それらはネットでも楽しめる。博打ではないということにはなっているが、街中にどれだけのパチンコ屋があるか。一方で、若い頃、アルバイト先では高校野球が始まると紙が貼り出される(笑)。もちろん違法だ。そういう仕組みをきちんとしながら、ネットを使って、一層進めていくべきだ」。

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 ジャーナリストの堀潤氏も、「先日、恐るべき現場を見てしまった」と苦笑する。「ある地域に取材に行くと、地域の運動会で子どもたちが50mを走る度に賭けていた。これ、絶対ダメなやつじゃないかと思ったが、“これでムチャクチャ応援が盛り上がるんだよ”と。アメリカでも闇社会の問題は非常に深刻だと思うが、そういうことを、ちゃんと管理してやりましょうということだ。そして、その利益が然るべきところに入っていくようにする。僕はスポーツくじのBIGが大好きでよく買っているが、代金がスポーツ振興に役立てられて、それこそ競技場が整備されるんだと思うと嬉しい」。

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 こうした疑問に対し、小林教授は「例えばアメリカで禁酒法が施行されていた間(1920年〜1933年)に何が起きたのかといえば“闇”、つまりブラックマーケットが発達してマフィアの隆盛を招いてしまった。世界のスポーツベッティング市場は日本のGDPの6割にあたる約330兆円の規模があると言われているが、このうち9割は“裏”だとされている。また、ある推計によれば、日本から海外のブックメーカーを通じてスポーツベッティングに流れている額は年に約1兆5000億円にも上ると言われていて、一番人気はNPB(プロ野球)だ。当然、違法だ」とコメント。

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 その上で、「これら裏社会との付き合い、取引を管理し、“表”に出すことによってマネーロンダリングをしにくくし、しっかり税収にしていく。アメリカも、そうした現実的な選択をしたということだ。また、スポーツベッティングは“DXの申し子”とも言われているが、海外では誰がどこに賭けたのか、全て履歴が残るし、金額も、もちろん1円まで管理できるようになっている。日本でいえばインターネットを使い、マイナンバーと紐づけることにより、全てが管理できるようになる。依存症対策の観点からも、掛け金に制限をかけたり、家族からの通報があった場合にアカウントを止めたりするといったこともできるだろう」。

■日本での導入、決め手は「明確な目的」か

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 テニスファンでもある平石アナは「平石直之アナウンサーは「テニスの場合、次のゲームでサービスエースを決めるかどうか、といったことであれば、選手同士が話しておけば簡単にできてしまうので、1対1のスポーツというのは相性が悪いのではないだろうか」、堀氏は「大相撲も苦労しながら向き合ってきたが、八百長は絶対に忍び寄ると思う。チームや選手を加担させない仕組みづくりが重要ではないか」と問題提起。カンニング竹山も「プロ野球でも、かつて“黒い霧事件”というのが起きたし、Jリーグがtoto(スポーツくじ)を始める時にも色々な議論があった」と懸念を示す。

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 小林教授は「もちろん啓蒙教育の導入は必要だが、アメリカの場合、4大プロスポーツは非常に年俸が高いので、誘惑にあまり駆られない。それでも100%防ぐことはできないが、逆に言えば合法であろうがなかろうがすでに起きていることであって、合法化されたから増えるということはないし、むしろ合法化によって捕捉される可能性が高まる。テクノロジーが発達しているので、オッズの異常な動きなどを検知する仕組みも発達している」と回答。

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 「今もプロ野球はtotoに入ることを拒絶しているが、気持ちは分かる。やはり羹に懲りて膾を吹いているということではないだろうか。それでもJリーグ、Bリーグは世界を見ているから熱心だ。いずれにしろ“ギャンブラー”はいるわけだし、合法化して管理すればコンテンツ価値は上がるし、スポーツ振興の役にも立つ。スポーツ団体の本音としては乗り気なのではないか。とはいえ、日本の公営競技はお国の管理なので、ある種の“ボッタクリ”ではある。その点、アメリカのスーパーボウルでは8500億円売り上げのうち約90%が還元されると言われている。やはり民間に任せれば還元率が勝負になってくるし、むしろライセンス制にして任せないと難しいと思う。一方で、スポーツ振興や青少年の教育など、明確な目的を打ち出す必要があるので、外資に対しては一定程度の規制がかかるだろう。ITなど日本の産業振興、そして何より、控除したお金で何をするかという点で人々を納得させなければならない」。(『ABEMA Prime』より)

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