将棋界のスーパーレジェンドが、一つの大きな節目を迎えている。タイトル99期、七冠独占、永世七冠など輝かしい実績を持つ羽生善治九段(51)が名人9期を含め、29期連続した順位戦A級から陥落することになった。厳しい実力世界だとわかりつつ、多くのファンからも羽生九段の降級については寂しがる声が多数見られ、また本人は今後について明らかにしていないものの、A級へ復帰し、再度名人に挑戦してほしいという言葉も集まっている。将棋親善大使を務める乃木坂46の元メンバー伊藤かりんは、降級が決まった対局の後「深夜にちょっと泣きました。ずっと強くいてほしいけれど、時代は少しずつ流れていくのだと…」と、胸が詰まったという。将棋番組にも多数出演し、棋士との距離も近い伊藤は、将棋史に名を残す大棋士の今後に、どんな期待を寄せているのか。
平成の将棋界を牽引するどころか、タイトル戦線では全てが羽生九段を中心に回っていたと言ってもいいほど、絶大な存在だった。ただちょうど年号が平成から令和となる変わり目に、新たな天才・藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)がプロ入りし、以降の活躍は周知の通り。逆に羽生九段は少しずつ成績を落とし、タイトルを失い、そして今回、順位戦A級から陥落した。ただ、その実績・功績に伊藤も「そういう時が来たのか、という驚きとともに、ここまで第一線で強く戦ってこられたことのすごさを改めて感じました」と、しみじみとした。「羽生先生はずっと頂点だと思っていたところがあったので、胸が苦しいです」。伊藤だけでなく、羽生九段の大活躍によって棋士を志した者たちも、その思いは同じかもしれない。それだけ絶対的な、神とも言える存在だ。
今年度末までに、羽生九段が何かアクションを起こさなければ、来期は30期ぶりにB級1組で指すことになる。ただし、羽生九段と同世代の森内俊之九段(51)は、降級とともにフリークラスへの転出を選択した。永世名人の有資格者が、必ずしも降級とともに順位戦からの“引退”を選ぶわけではない。しかし、その選択肢があるだけに、関係者もファンも今後の動向に注目せざるを得ない。「今後、森内先生のような選択もありますし、加藤一二三先生(九段)のように、ずっと生涯現役で戦い続けることもかっこいいと思います」と、羽生九段の選択を尊重しつつ、その姿を見守るつもりだ。
ただ、一人のファンとして「勝手に諦めていない」のが、前人未到のタイトル100期だ。「たくさんの対局が見たいなという気持ちはありますし、今でも十分に見せていただいています。ただ、羽生先生のタイトル100期は見たいです。99期まで行っているからこそ、100期は私が勝手に諦めていないです」。現在五冠を保持する藤井竜王が、このままあと19年間五冠を持ち続けて、ようやく達成できるというような夢の記録。99期でも100期でも、それが偉業であることに変わりはない。しかし、やはり大きな節目の数字は達成してほしい。これまでも多くの期待に応えてくれた羽生九段だからこそ、ファンも簡単には諦めたくない大記録だ。
羽生九段が、この100期をかけて臨むタイトル戦には、現状を考えれば藤井竜王が番勝負で待ち構えている可能性が高い。羽生九段と藤井竜王。タイトルをかけてこの2人が戦うという黄金カードは、やはりファンの夢そのものだ。
(ABEMA/将棋チャンネルより)