“九州人の常識”は非常識だった?県議も驚いた高校の“朝課外”に廃止の動きが…テレ朝・平石アナ「暗いうちに家を出て…何の疑いも持っていなかった」
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 「朝課外」。そう聞いてピンと来るのは九州出身者だけかもしれない。公立高校を中心に、1時限目の前に、いわば“0時限目”として行われている補習のことだが、その存続を検討する県が相次いでいるというのだ。

 大手予備校や塾のなかった1960年代後半、大都市圏と地方の教育格差を埋めようとPTAが主体となり始まったものだが、正規の授業ではないにも関わらず実質的な“強制”になっているという意見や、欠席が内申点に影響するという意見もある。また、オンラインによる授業も受けられる時代、早朝に登校することそのものの意義も問われているのだ。

【映像】九州の常識“高校の朝課外”は子どもたちのためになる?

■テレ朝・平石アナ「何の疑いも持っていなかった」

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 佐賀県の公立進学校を卒業したテレビ朝日平石直之アナウンサーは「同調圧力も何も、“行くものだ”と、何の疑いも持っていなかった。0時間目が7時半からで、夕方、6時間目が終わったあとに7時間目、8時間目もあった。自転車通学だったので、暗いうちに家を出て、暗くなって帰宅していた」と振り返る。

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 「1、2年生の頃はポツポツという感じだったが、3年の高校総体が終われば毎日、この9時間授業だ。そして土日には模試がある。そうでなければ都会の予備校に通っている生徒や中高一貫校の生徒と、センター試験のような同じ土俵で戦えない。むしろ予備校は浪人した生徒が行く所という発想だったし、実際、周りに通っている生徒はいなかった。生徒や保護者にとってみれば有り難い取り組みだし、これを止めてしまえば、底が抜けてしまうという感じもする。

 ただ、先生が大変だというのは当時から間違いない。土日も模試のために出勤だ。それでも進学実績を作ることに血道を上げていたし、それに生徒が食らいついていくみたいな感じだった。ただ時代の流れに合わなくなってきたんだろうなと思うし、少なくとも選択制にするのはマストだろうし、あるいはネットという方法もある」。

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 山形県の公立進学校を卒業したテレビ朝日の田中萌アナウンサーも、朝課外こそなかったというが、「学校での勉強だけで大学に行こうと思ったら、そのくらいしなければいけないというのは理解できる」と応じる。「当時は県庁所在地ですら塾がなかったくらいだったので、みんな朝から登校して夕方まで、土日も登校して勉強をしていたし、“自習”という形ではあったが、先生方もかなりバックアップしていた」。

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 一方、福岡県の私立高校を卒業した通信制高校ルークス代表の斎木陽平氏は「地方であればあるほど、公立高校であればあるほど、先生たちの地元国公立大志向が強く、誘導される。僕は東京の大学に入学したが、“九州大学に行け”と言われるのがすごく嫌だった。背景には自分たちの教育メソッドで応援できるということ、進学実績になるからだと思う。もっと柔軟な考え方になってほしいと思っていた」。

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 また、その福岡県と関門海峡を隔てた山口県下関市に育ったロンドンブーツ1号2号の田村淳は「ちょっと信じられない。日本っぽい話で、僕なら絶対に出ない」と苦笑。「ただでさえ学校の先生のタスクは多いし、部活動も含め“熱意”によって支えられている教育システムには意味がないと思う」。

■“朝課外問題”を連載する記者「“先輩たちは受けていたぞ”と…」

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 朝課外問題にメスを入れている毎日新聞宮崎支局の一宮俊介記者は「個人的な経験もあって、どうしても取材に力が入っているが(笑)、そもそも子どもたちのためになっているのか、という疑問があった」と話す。

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 「県によって実施状況や呼び方に違いがあるし、同じ県内でも実施している学校としていない学校がある。あくまでも宮崎県の普通科高校で実施されている朝課外を前提にお話すると、多くの高校では年度初めに保護者にアンケートを採る“選択制”が導入されている。しかし勇気を出して“受けない”と答えた生徒が先生に呼ばれて、“何で受けないんだ”とか、“あそこの大学に受かった先輩たちは受けていたぞ”と言われたという話を聞いた。僕が在学中の時と変わっていないというのが現状だと思う。

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 正面から高校に取材に行くと、対応するのは教頭なので、“PTA会長から依頼されてやっている”という建前を話すし、熱血でバリバリにやられてきた先生方からすると、“国立に通すためにはやったほうがいい”としか言われない。一方で、図書館で朝課題の資料を探していた先生は“本当につらい”と明かしてくれたし、若い先生方からは“共働きなので子どもの送り迎えを考えると時間的に無理だ、本当に止めてほしい”といった声も聞いた。

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 PTAが生徒から1人あたり数百円を徴収して実施されているので、たしかに学習塾に比べれば安いだろう。ただ、朝課外に効果があったかと言えば、共通テストの平均点で九州の高校が全国的に高いということはないようだ。実際、やめて2、3年経った時点で特に成績に影響はなかったという学校もあったし、日の出の遅い冬だけやめてみた結果、成績に変化はなかったので1月は無くそうという学校もある。先生たちと生徒・保護者が安心を得た上で変えていこうという動きが広がっているということだ」。

■議会で質問を行った県議「もうこの制度は合わない」

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 一宮記者の記事を読んだことがきっかけで、宮崎県議会で質疑を行ったのが田口雄二県議だ。

 「私自身は私学だったので朝課外はなかったが、家内は鹿児島県立の普通科高校、3人の子どものうち、2人が宮崎県立の普通科高校だったので、やはり朝課外に当たり前のように行っていたし、“県立高校とはそういうものなのだろうな”と勝手に思い込んでいた。しかし一宮さんの記事を読んで、これは九州だけの、ちょっと変わった風習なのかと思うようになった」と明かす。

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 「その頃、朝日新聞の宮崎県版に掲載された本県出身の歌人・吉川宏志さんの『京都から見た宮崎』という記事も読んだ。“30年前に京都に住み始めた時、午後4時くらいに進学校の高校生が帰っていく風景を目にしてびっくりした。宮崎では朝早くから課外授業が始まり夕方も課外授業があった。授業が毎日10時間くらいあったのである。冬だと家に帰る頃は真っ暗になっている。帰宅してからも宿題を大量にやらねばならない。体力がないとすぐに潰れてしまう生活だった”と書かれていた。

 そこで県議会で質問してみると、同僚議員たちも“九州だけのことだったのか”などと非常にびっくりしていた。それは県職員の皆さんもそうで、話をするたびに聞くようにしたところ、“普通科高校に行くと朝課外があるので、それで商業高校に行った”という方もいたし、“眠いだけで効果なんて全然ない”という声も多かった。それは地元出身の記者の皆さんも同じだった。

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 仮に九州の生徒の皆さんの成績が非常に良く、進学率も非常に高いということであれば納得できるかもしれない。しかし実態はそうではない。学力というのは自分が本当に学びたいこと、学んで楽しいことが見つかった時に大きく伸びるものではないか。それぞれ進路が違うのに画一的な課外授業するのは間違っていると思うし、もうこの制度は合わない。そろそろ自主性を持たせた勉強方法を考える時が来たのではないか。

 もう一つ、大きな問題は、朝課外が先生本来の仕事ではないのではないかということだ。議会の質疑では教育長から“本来の業務ではないため、指導にあたる教師は兼職・兼業の手続きをとった上で実施している”という答弁もあったし、通勤の途中に事故に遭っても公務災害にあてはまらないので、PTAが保険に加入している状況だ。しかし、そういう実態をPTAの皆さん方も知らないのではないか。新年度になったので、私は6月議会でもさらに追及してまいりたい」。(『ABEMA Prime』より)

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