将棋の渡辺明名人(棋王、38)が5月29日、岡山県倉敷市の「倉敷市芸文館」で行われた第80期名人戦七番勝負第5局で、挑戦者の斎藤慎太郎八段(29)を97手で破ってタイトルを防衛した。シリーズ成績は4勝1敗。この結果で名人3連覇を達成、タイトル通算獲得数を31期に伸ばした。
圧倒的な強さで充実ぶりを示した。名人3勝、挑戦者1勝で迎えた第5局は、渡辺名人の先手番で「角換わり」の戦型となった。第4局までと同様、斎藤八段はたっぷり持ち時間を投入。形勢互角のまま対局2日目を迎え、互いに攻めか受けか、慎重に読み進めて激しい中盤戦へ進行した。終盤戦は一手一手を争う寄せ合いに。カド番の斎藤八段は一筋の光を求めて渡辺玉を猛追する。しかし、渡辺名人は脱出ルートを確保して冷静に対応。最後まで主導権を握らせることなく、斎藤八段を投了に追い込んだ。この結果でシリーズ成績を4勝1敗とし渡辺名人が防衛、名人3連覇を達成。タイトル通算獲得数を31期に伸ばした。
対局後、渡辺名人は「長い戦いだったので終わってほっとしているところです。いろいろあったんですけど、目の前の一局に向かってあまり先を見ずにやっていました」と今シリーズを振り返った。また、3連覇達成については「9時間の長丁場で、毎回大変な番勝負になると思ってやっている。その中で結果を出せてよかった」と安堵の表情を浮かべた。
一方、斎藤八段は「終始苦しい番勝負になってしまって、なかなか打開策が見つからなかった。(第3局の勝利をきっかけに)立て直せるかが勝負だったと思うが、2局続けて負けてしまったのでそれを活かせなかった」と悔やんだ。2期連続の1勝4敗に「結果的には去年から変化できなかった。まだまだ足りないところが多い」と肩を落としていた。
渡辺名人は、2022年1月に開幕した王将戦七番勝負で藤井聡太竜王(19)を挑戦者に迎え、史上初の三冠VS四冠の激突で大注目のカードを戦った。しかし、まさかの0勝4敗で王将位を失冠。厳しいスタートとなったが、続けて開幕した棋王戦五番勝負で永瀬拓矢王座(29)に3勝1敗で勝利。同棋戦10連覇の偉業を達成した。休む間もなく訪れた名人戦七番勝負は、2期連続で斎藤八段を挑戦者に迎えた。開幕連勝と幸先の良い出だしを切るも、第3局では最終盤に大逆転負け。しかし引きずられることなく、第4局、第5局で斎藤八段を圧倒した。通算成績は4勝1敗。渡辺名人が円熟の域に達していることを見せつけたシリーズとなった。
◆タイトル獲得数ランキング
1位 羽生善治九段 99期 ※現役
2位 大山康晴十五世名人 80期
3位 中原誠十六世名人 64期
4位 渡辺明名人(棋王) 31期 ※現役
5位 谷川浩司十七世名人 27期 ※現役
◆渡辺明(わたなべ・あきら) 1984年(昭59)4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年四段昇段で史上4人目の中学生棋士となる。2004年、20歳8カ月で初タイトルの竜王を奪取。以降、棋王10期、王将5期など史上4位の31期。竜王と棋王は永世資格を保持している。趣味は野球、競馬、カーリング、サッカーなど多種多彩。
(ABEMA/将棋チャンネルより)