藤井聡太竜王、飛躍の夏から試練の夏へ 強豪挑戦者たちの研究を受け止め続ける厳しい防衛ロード
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 今までは「飛躍の夏」だったところが、今年は「試練の夏」と呼べそうだ。将棋藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)が、お~いお茶杯王位戦七番勝負で豊島将之九段(32)、ヒューリック杯棋聖戦五番勝負で永瀬拓矢王座(29)からの挑戦を受けている。2年前には藤井竜王が棋聖で最年少タイトル、王位で最年少二冠を達成したが、今年は2つの防衛戦で計3局指して1勝2敗と苦戦中。通算勝率8割を超える圧倒的な強さを見せてきた令和の天才棋士が、先輩たちの意地と研究の前に、試練を与えられている。

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 2022年度の成績は5勝3敗、勝率.625。防衛を果たした叡王戦での3局をはじめ、8局中、タイトルをかけた番勝負が6局を占めるなど、超ハイレベルの対局が続いていることもあるが、年度勝率で1度も8割を切ったことがない藤井竜王ゆえに、この数字は「苦戦」とも読み取れる。それほどまでに藤井竜王は、とてつもないペースで勝利を積み上げ、タイトルを取ってきた。この2年間は、夏を迎える度に最年少タイトル、最年少防衛など、どんどんと記録を塗り替えていく飛躍のシーズンだった。

 ただ、今年は様子が異なっている。現在最多の五冠を保持し、将棋界の頂点に立った。順位戦でもA級に上がり、最年少での名人獲得もあるか、という点に注目は集まっているが、8つあるタイトルのうち5つでは守る側にいる。ここに現タイトルホルダー、さらにはタイトルを奪われた先輩が、リベンジの思いをかけて挑戦者として名乗りをあげてきた。タイトルは奪取するよりも防衛する方が難しいと言われている。まだ王位戦、棋聖戦をあわせても3局だが豊島九段、永瀬王座の深い研究の前に、対局序盤から長考に沈む藤井竜王の姿は、ファンの目にもずっと映り込んでいる。

 王位戦七番勝負の第1局、ABEMAの中継で解説を務めた渡辺明名人(棋王、38)は、挑戦者・豊島九段がファンも驚くほど深いところまで研究を進め、選択に迷いそうなところでも時間をかけず指したことに「このぐらい普通ですよ」と語った。研究の深さには定評がある渡辺名人だけに、他の実力者がどの程度研究してから指しているかも、よくわかる。事前に検討を重ねていなければ時間をかけずに指せるはずがない難所だとわかるからだ。当然、藤井竜王も他のトップ棋士と同等かそれ以上に研究を重ねているが、周囲の棋士が「打倒藤井」で対策を練ってきたものに対し、全てを事前準備で網羅することなど不可能に近い。その結果、番勝負の場で初見の手をどんどんとぶつけられ、長考を強いられることが続いている。

 7月19日には20歳の誕生日を迎える藤井竜王。これをまたぐように王位戦、棋聖戦でそれぞれフルセットまで進めば、あと9局の激戦が待っている。研究の成果を序盤からぶつけてくる豊島九段、将棋界屈指の“研究の鬼”とも言われる永瀬王座。どちらも用意してくる手は、最先端のさらに先を行くような未知の領域に踏み込んだものだろう。挑戦者たちが何日、何週間、あるいは何カ月かけて温めてきたものを、限られた時間の中でどこまで理解し、対応できるか。記録的猛暑が続く夏、藤井竜王にとっても実に厳しい防衛ロードだ。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【動画】防衛を目指して戦う藤井聡太竜王
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【中継】藤井聡太棋聖が永瀬拓矢王座を迎え撃つ棋聖戦五番勝負第3局
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