藤井聡太竜王、5連覇ならず 個人・団体通じて初の予選敗退「大先輩といい経験ができた」/将棋・ABEMAトーナメント
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 絶対王者がまさかの予選敗退だ。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Eリーグ第3試合、チーム藤井とエントリーチームの対戦が7月23日に放送された。勝ったチームが予選通過という痺れる戦いだったが、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)は1勝1敗、チームメイトの森内俊之九段(51)、藤井猛九段(51)が2連敗と、スコア1-5で完敗。藤井竜王は個人戦だった第1回、第2回、さらに団体戦となった第3回、第4回と全て優勝という最高の結果を収めてきたが、今回は本戦を前に姿を消すことになった。

【動画】敗因を振り返る藤井聡太竜王

 若手もベテランも苦戦する超早指し戦においても抜けた強さを誇ってきた藤井竜王だったが、今年は本来の調子を出す前に終わってしまったのかもしれない。第1試合、チーム渡辺との対戦では渡辺明名人(棋王、38)に1勝1敗、近藤誠也七段(25)にも敗れて、1勝2敗に終わった。渡辺名人からも「本来の出来じゃない」「調子が悪い」と指摘されるほど。対戦相手も十分に強豪だが、その上を行く強さを見せてきた藤井竜王の実績を考えれば、物足りないという印象もあった。

 第2試合は、第1局で藤井九段が敗れてスコア0-1となった第2局で登場した。相手はチーム渡辺との戦いで勢いをつけている黒田尭之五段(25)。黒田五段が先手番から角交換型の三間飛車、さらには向かい飛車を目指すと、藤井竜王はいつも通り堂々と迎え撃った。「序盤から失敗してしまった」と、早々にペースを握られる苦しい将棋になると、中盤以降は逆転したが、その後も黒田五段の驚異的な粘りに苦戦。「うまく指せたとは言い難い内容。粘られて危なくしてしまったというところもありました」と反省の弁が続くと、敗れた黒田五段の方が「個人的にもすごく勉強にも、いい経験にもなりました」と晴れやかな顔。むしろ将棋界の頂点に立つ棋士に善戦できたことで、さらに弾みをつけたような一局になった。

 スコア1-3とリードされ、いよいよ負けられなくなった第5局、先後を入れ替えて黒田五段と再戦になった。ここで早速のリベンジに燃える黒田五段が、とっておきの横歩取りで挑戦してきた。またも受けて立った藤井竜王だが「序盤の構想段階でよくない指し方をしてしまった」と、再び先行された。華々しい序盤で、かなり駒の動きも激しい一局になったが、自分のフィールドで戦えていたのは終始、黒田五段の方。藤井竜王も「途中から全体的にきついと思ってやっていた」と振り返るように、明確に形勢をひっくり返す場面が見られることもなく、そのまま黒田五段に大金星を献上することになった。

 森内九段、藤井九段と実績十分のベテランも、リーダーにしてエースの藤井竜王の不振が伝わったのか、持ち味の出た将棋を指すことができず両者ともに2連敗。チーム全体としても、最後まで波に乗り切れない試合で、粘るポイントさえ見つからない完敗となった。

 試合後、ファンからは「楽しませてもらったよ」「もっと見たかったー」「いいチームだったよ!」と予選敗退を惜しむ声も多く寄せられる中、藤井竜王は「チームのお二人に申し訳ない。このチームでもっと戦って行きたかったです」と悔やむと、「自分にとってはなかなかお話をさせていただく機会がないお二人。同じチームとして戦って、お話もさせていただいて、自分にとっていい経験でした」という言葉で締めた。

 常勝・藤井竜王であっても、流れを掴まなければ負けてしまう怖さがあるのが、この超早指し戦。大会も回数を重ねることに、指し方の工夫やバリエーションも増えてきている。次回大会では初めて「リベンジ」を掲げて参加することになる藤井竜王。たたでさえ公式戦、とりわけタイトル戦で多忙な日々を送るが、5回目の優勝に向けて少しでも事前準備の時間が取れれば、再び無双状態で勝ちまくる藤井竜王の姿が見られる。

◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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