森保一監督率いる日本代表は28日、キリンチャレンジカップ2023でコロンビア代表と対戦した。開始3分に三笘薫のヘディングで先制点したものの、その後2点を失い、逆転負けを喫した。1点を追う状況で迎えた後半の終盤、森保監督はこれまでの4-2-3-1ではなく、4-4-2のフォーメーションを採用。このシステムは効果があったのだろうか。
【映像】浅野拓磨が「森保メモ」を」キャプテン遠藤に手渡すシーン
浅野投入と布陣変更で攻撃のギアを上げる
78分、森保監督は守田英正に代えて浅野拓磨をピッチに投入した。この交代を機にフォーメーションを4-4-2へと変化させた。センターバックには板倉滉と瀬古歩夢のコンビ、右サイドバックに菅原由勢、左サイドバックには伊藤洋輝が入った。遠藤航がアンカーの位置に入り、インサイドハーフに伊東純也と堂安律、トップ下に久保建英、2トップに上田綺世と浅野拓磨という配置だ。これにより、ピッチを5分割した際に一番外側にあたる、大外レーンが空いた。そこにサイドバックを上げ、攻撃に人数をかける作戦だったと考えられる。
森保監督の判断がもたらしたものとは
浅野は交代時、森保監督が書いたメモを持っており、そのメモには「タケ(久保)」や「リツ(堂安)」など選手の名前と各選手の配置が記されていた。森保監督は試合後「あのメモはダイヤモンドの形を選手たちが把握できるように渡し:た」と説明した。
日本は1点を追いかけ、攻めるしかない状況だったため、ダブルボランチを1枚削り、攻撃に人数を割くことを選んだ。ボランチの人数を減らすことで守備の強度が格段に低下し、アンカーの負担がかなり大きくなる。そうした懸念があったとしても、“デュエル王”遠藤であれば、ある程度の攻撃は対応できると判断したのだろう。
監督は便宜上「4-4-2のダイヤモンド型」と呼んだと思われるが、実は守備を犠牲にしたファイヤーフォーメーションだ。過去にスペインの強豪、レアル・マドリードが見せたように、従来のダイヤモンド型と言えばインサイドハーフには、ボランチなど中央のポジションを本職とする選手が務める(レアル・マドリードではトップ下に元スペイン代表MFイスコ、インサイドハーフに元ドイツ代表MFトニ・クロースとクロアチア代表MFルカ・モドリッチ、アンカーにブラジル代表MFカゼミーロを起用していた)。しかし今回は急造ということもあり、ウイングの伊東と堂安が務めた。この形は練習でも行っていないものであり、デザインされたものではなかったため、結果的に混乱を招く結果となってしまった。
混乱するピッチ内で起こった現象とは
このフォーメーションを採用したことで、前述のように伊東がやや内側(ハーフスペース)に移動し、左大外レーンが空いた。左サイドバックの伊藤はそのスペースを活用するために高い位置に上がる必要があった。しかしながら、その動きを見せなかったことで左サイド側ではやや交通渋滞が起きていたようだ。そもそも、伊藤は攻撃的なサイドバックではない上、伊東も内側でプレーするタイプの選手ではない。
それ以前に、日本代表の長所は三笘薫や伊東、堂安ら高い能力を持ったウイングにある。そのポジションが存在しないダイヤモンド型の4-4-2を計画的に採用するのは不自然だ。
森保監督はコロンビア代表にリードを許している状態を打破するべく、単純に前がかりに攻めるフォーメーションに変更したかったのかもしれない。現時点では、この先、計画的にこのようなフォーメーションを採用する可能性は極めて低いと言えるだろう。
(C)浦正弘(ABEMA/キリンチャレンジカップ2023)