この勢いは誰にも止められない。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Bリーグ第2試合、チーム羽生とチーム斎藤の対戦が5月13日に放送された。羽生善治九段(52)は、チーム山崎戦に続いて第2試合でも大暴れの3戦全勝。若手棋士、相手チームのリーダー・斎藤慎太郎八段(30)を次々になぎ倒して、自軍の予選突破をけん引した。
今季の予選トーナメントでは、第1試合でチーム山崎の中村太地八段(34)、チーム斎藤との第2試合で黒田尭之五段(26)、斎藤八段、冨田誠也四段(27)の全員に勝利。一般的に若手有利と言われるフィッシャールールを完全に攻略して、その存在感を見せつけた。
さらに、公式戦同様に幅広い戦型選択も話題を呼んだ。黒田五段との第3局では先手の三間飛車に対して向かい飛車を採用し、相振り飛車戦に快勝。終局後には、「里見(香奈女流五冠)さんと西山(朋佳女流三冠)さんのタイトル戦でよく出てくる出だし」と女流棋戦から着想を得た相振り飛車戦の構想だったことを明かし、ファンを驚かせていた。また、フルセットの最終局は冨田四段との対戦が持将棋にもつれる大熱戦に。冨田四段の四間飛車の出だしに対し、チームメイトの梶浦宏孝七段(27)が指した将棋を元に優勢を築いたことも語るなど、伊藤匠六段(20)を含めチーム一丸となって激闘を切り抜けた。
また若手とのチーム結成とあり、雰囲気作りの面でも一流の気配りが光っていた。オーダー決めや作戦会議でも、梶浦七段、伊藤六段の意見を取り入れつつ、前面に立つ場面、サポートに回る場面とまさに緩急自在。包み込むような柔らかな笑顔も印象的だった。最終局では指し直し局の大激闘で自ら勝負を決めるなど大活躍を見せたものの、インタビューでチームメイトへのコメントを求められると、「(持将棋から指し直しとなり)ご心配をおかけしました」。あまりに謙虚でユーモアあふれる応答に、仲間からも笑顔がこぼれていた。
この結果、羽生九段の予選通算成績は4戦全勝。勝率100%で、今大会から設けられた個人賞の「最高勝率賞」堂々の1位に。本戦ではこの連勝記録がどこまで伸びるのか、羽生九段の活躍はもちろん、チーム羽生の躍進も今後の大会の大きな見どころとなりそうだ。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)