将棋の伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦挑戦者決定戦が5月18日に行われ、佐々木大地七段(27)が羽生善治九段(52)に117手で勝利した。この結果佐々木七段は、若き絶対王者・藤井聡太王位(竜王、叡王、棋王、王将、棋聖、20)が待ち受ける七番勝負へ初挑戦。ヒューリック杯棋聖戦五番勝負に続き、夏季に開催される2つのタイトルに同時挑戦することが決まった。王位は、師匠の深浦康市九段(51)が3連覇を達成したタイトル。終局後の会見では「師匠も獲っているタイトルですし、自分としても気持ちの入る棋戦」と語った。質疑応答の主な内容は下記の通り。
――本局を振り返って
「序盤から難解な将棋で、先手番ながら攻め込まれてしまったあたりは自信がなく、粘ってチャンスを待つ展開になった。自分なりにしぶとく戦えたのではないかなと思う」
――師匠の深浦九段も獲得した王位戦の印象
「2日制のタイトルということで、濃密な将棋になることが多い。師匠も獲っているタイトルですし、自分としても気持ちの入る棋戦です」
――長い持ち時間の将棋についての印象
「これまでは順位戦(持ち時間各6時間)が最長ですが、結果が出せていない。王位戦のタイトル戦はは8時間で2日制ということもあり、未知の世界だなと思う。長考はする方なので、8時間を有意義に使っていきたい」
――藤井王位の印象
「第一線で活躍されていて、常に妥協なく最善を追い求める姿は同じ棋士としても影響を受ける。自分にないものを持っているので、番勝負でいろいろと吸収したい」
――好調の要因は
「集中して研究やVSなど練習できる環境が続いていて、勝ったことでまた良い効果につながっているのかなと思う」
――重要対局が続くが対策は
「万全の態勢で自分の将棋が指せないと相手にならないと思っているので、日頃の健康管理や睡眠時間も含めてしっかりと調整したいなと思う」
――七番勝負は全国を転戦
「春に(地元の)九州に帰った際、地元の方々にもとても応援していただいていたので、タイトル戦で夏に帰ることができるのが非常に嬉しい。各地方に行くこと自体が気分転換になると思いますし、対局に良い影響があるのではないかなと思います」
――棋聖戦五番勝負と合わせて“十二番勝負”を戦う夏への意気込み
「ここまでとんとん拍子で挑戦が2つ決まったが、これで終わりではなく、これからが勝負。しっかりとタイトル戦で良い将棋を指して、結果も伴えるようにしたい」
――王位リーグ入りしてから6年間の歩み
「最初にリーグ入りした時は上位陣の壁に当たり、良いところなく陥落となったが、徐々に勝ち越せるようになった。ただ、リーグ優勝や挑戦ということにはならなかったので、今期大きなチャンスをつかめたことは嬉しい」
――王位3期の深浦九段に具体的な話を聞く予定は
「王位戦は2日制になるので、持ち時間の使い方などわからないことが多いと思うので、アドバイスを聞いて活かしていきたい」
――七番勝負でファンに見てほしいところ
「簡単には崩れないというのは意識しているので、粘り強さを8時間の2日制でも出していければと思います」
――羽生九段と大舞台で戦った印象
「羽生九段は自分にないものを持っていて、これまでの対局で読みの速さや正確性が劣っていると実感していた。厳しい勝負になると思っていたが、指していると自分の読みのない手があったりで、逆に楽しくなっていた。もちろん形勢が苦しいと感じるときもあったが、大きな一番でいろいろ吸収したいと思いながら指していた」
――連続でタイトル挑戦を決めることができた心境
「先手番で自分の相掛かりを主体として勝ち上がることができたことが大きかった。良い集中力で挑めたことが良かったですし、棋王戦挑戦者決定戦で敗れた時と比べて落ち着いた気持ちで挑めたと思っています」
――タイトル戦での相掛かり採用の可能性
「相掛かりを始めたのは三段リーグに入った位の時から。何か武器がないとリーグでは戦っていけないと感じていたので、その中で力戦模様でいろいろと工夫のしやすい形なのかなということで相掛かりを始めた。激しい展開もあればじっくりした流れになることもあるので、序盤から含みの多いところが相掛かりの魅力だと思う。棋聖戦と合わせて王位戦と十二番勝負になるので、どのくらいの頻度になるかはわかりませんが、これまでも愛用してきた作戦なので使っていこうかなと思っています」
――藤井王位とは2勝2敗。師匠の深浦九段は3勝1敗で勝ち越している
「かなり昔のデータなのであまり参考にはならない。常に最善を求める将棋で妥協しないのが特徴だと思っている。師匠は勝ち越しているので、今回の番勝負でいろいろアドバイスを聞こうと思っているが、すぐに効果が出るようには思えないので、地道に自分の準備に集中したい」
――十二番勝負はプラス?プレッシャー?
「私にプレッシャーがかかる場面ではない。失うものはないので、前向きに楽しみながら戦えるのではと思う」
――リーグ戦全勝から挑戦者決定戦まで全勝で終えることができた要因は
「見落としが少なったことと、一局目と渡辺明名人との対局で先手番だったので、要所で自分の好きな形ができたことが良かったのかなと思います」
――夏の暑い時期は得意、不得意?
「イベントの多い時期ですし、夏は比較的好き。今回はダブルタイトル戦になるので、それも含めて充実した夏にしたい」
――タイトル戦に不安はない?
「タイトル戦を一局も経験していないので、移動日や(前夜祭などでの)スピーチなどに不安はありますが、勝負が始まってしまえば変わらない。時間の使い方だけ気を付けたいなと思う」
(ABEMA/将棋チャンネルより)