もし、原爆投下直後の広島にタイムリープして歩けたら? テクノロジーによる記憶の継承と開発者の思い
【映像】アバターで原爆投下直後の広島を体験
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 被爆の実相を世界に向けて発信したG7広島サミットが開催された今年。広島は原爆投下から78回目の夏を迎えている。当時の事を知る人が少なくなり、“記憶の継承”という課題を抱えながら私たちは時を刻んでいる。そんな中、日々革新するテクノロジーの力が当時と今をつなぐ大きな役割を果たしている。

【映像】アバターで原爆投下直後の広島を体験

 その最先端の取り組みを行なっているのが、東京大学大学院の渡邉英徳教授。これまでAIを活用した戦前・戦後の白黒写真のカラー化や、被爆者の証言や記録をまとめた「ヒロシマ・アーカイブ」など、テクノロジーを活用した記憶の継承に取り組んできた。

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 原爆の日に合わせて開催された「ミライの平和活動展」(8月6日まで)では、様々な新世代の平和活動コンテンツを公開した。

 特に目を惹くのは「体験者を撮影しアバター化。自分の分身が原爆投下直後の写真の中に入ることで現場を体験できる」というもの。

「白黒ということもあって当時の写真は絵に見えてしまう。でも実際はアバターが存在しているように、立体の人と空間が広がっていた。アバターを操作することでその感覚が蘇ってくる」(渡邉教授、以下同)

 アバターを操作し、写真の中に入り込むことによって、これまではぼんやりと眺めるだけだった風景から新たな気づきを得られるようになるという。

「『これは何だろう』『この人は軍服を着ているんだろうか』とか、細かいところが気になってくる。自分のアバターの身の回りにある空間を観察することができる」

 78年前の原爆投下は、特に子どもたちにとっては歴史上の出来事。ゲームのような感覚で、当時の光景を目の当たりにする体験が歴史と今を繋ぐ記憶の継承の役目を果たす。

「原爆が落ちたときの様子を今の自分が歩いていると思ったらすごい貴重な体験だと思った。実際、街を歩いているようで絵や写真とは違った体験ができた」(展示会来場者)

 渡邉教授は、過去の戦争だけではなく、今まさに起きていることをテクノロジーを活用して実感できる取り組みも進めている。

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「これはウクライナの現地の人が収録した被害状況。3DのデータをVRで体験できる」

 ウクライナの現地の様子をスキャンした映像を3D化し、VRゴーグルを使って体験。普段は画面越しで見ている戦地の状況が目の前に広がり、そこに住む人々がどんなことを感じているのかを実感することができる。

「映像が持っている“他人事感”。テレビを通した瞬間に自分とは関係ない別の世界の出来事という感覚になってしまう。その距離を縮めて“我が事”に感じてもらう趣旨で作成した」

 こうした、過去や遠く離れた場所での出来事を身近に感じられるコンテンツが、平和な世界を作るために役立てられるのではないかと渡邉教授は話す。

「体験者からは『楽しめました』という感想が多かった。一般的には原爆に楽しいという概念はなかなか結びつかず、悲壮感を覚える方が多いが、入り口にテクノロジーを活用することで、『悲劇を二度と繰り返さない』『こうした状況をもう生み出さないようにしなければ」という大切なメッセージを素直に口にだせるようになる」

 戦災のデジタルコンテンツ化は、残された資料に手を加えるということでもある。渡邉教授は、当時の息遣いをなるべく損なわないように未来へと伝えていきたいとしている。

「当時の方は懸命に手記や写真といった当時のテクノロジーで記録した。僕たちはその写真や文字をAIやVRなどで、いろいろな技術で呼び起こして、息遣いを再現することができる。その営みを未来に向けて続けていくことが僕にとっての広島の継承」

(『ABEMAヒルズ』より)

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