「無駄な入院は今すぐやめよ」 医療保険料、現役負担“10年で4割増”に現役医師が警鐘「病床数は半分に減らせる」
【映像】「高齢者の血圧の薬、切ってもほとんど変わらない」医師の激白にスタジオ騒然の瞬間
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 今、日本は高齢者の割合で世界トップを独走している。総務省の発表によると、総人口に占める65歳以上の割合は29.1%と過去最多となり、そのうち80歳以上が10.1%に達している。つまり10人に1人が80歳以上なのだ。

 そうした状況のなか医療費は膨らみ続けている。昨年度、医療機関に支払われた医療費は46兆円でうち4割を75歳以上の高齢者が占める。これを支えているのが現役世代で、例えば35歳から39歳の年間の保険料は2010年度の21.1万円から、10年間で30.8万円にまで増加している。

 この状況に「支えきれない…日本の医療制度はもう限界」「もっと高齢者に負担してもらうしかなくなる」「高齢者医療費の削減をもっと本気で考えて!」と多くの悲鳴があがっている。現役世代の負担を減らすにはどうすればいいのか。19日の『ABEMA Prime』で専門家とともに打開策を考えた。

なぜ「無駄な入院を今すぐやめるべき」なのか

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『人は家畜になっても生き残る道を選ぶのか?』の著者で、医師・医療ジャーナリストの森田洋之氏 は「医療費の多くを使うのは高齢者。その“中身”をどうしていくか考えなくてはいけない」と言及。「医療費をかけているのに、高齢者の方々の生活の質があまり上がっていない実態が結構ある」と述べた。

 森田氏の持論は「無駄な入院を今すぐやめよ」だが、その背景について高齢者の切り捨てではないことを前提として以下のように説明する。

 「日本は人口あたりの病床数が世界最高レベル。米英の5倍持っている。しかし、日本人が5倍病気になるわけではない。実は、高齢者の慢性期医療や療養病院、精神科病院など急性期医療ではない部分で増えている」

 「日本の中でも地域差がある。1人当たりの入院医療費が一番多いのが高知県で、神奈川県や静岡県などと比べると約2倍だ。病床が多い県ほど使っている」

 さらに「病床を作ったら埋めないと病院は経営ができない。1億円、2億円とお金をかけて病院を建てて、10%しか埋まらなかったでは赤字になってしまう」との問題点も指摘する。

医師・病院は「ビジネスから脱却せよ」

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 森田氏は「95歳のおじいちゃんが家で暮らしていて、肺炎になった。僕らは在宅医療をやっているので家でも点滴はできるが、病院でも治療できる。入院できたほうが患者さんは喜ぶし、病院も病床が埋まるから潤う。そういうグレーゾーンがいっぱいある」と実例を挙げて説明する。

 北海道夕張市の診療所に勤務経験もある森田氏は「夕張市は、2007年に財政破綻 した。当時約1万人の人口に対し、171床もつ総合病院が1つだけあったが、これがなくなり、病床は19床に縮小された」と言及。続けて「医療崩壊してみんな困っているだろうと思ったが、実際に行ってみたら何事もなかった。病院や在宅医療の高齢者を見ていると、都市部の病院や施設で暮らしている高齢者の人たちよりずっと元気そうに見えたぐらいだ」と、夕張での自身の医療経験を踏まえ、入院しなくてもいい人は帰らせようという思いに至ったという。

 同氏によると「死亡率はほぼ変わらず、医療費は大幅に減り、コストが下がった」とのことだが、タレントのパックンは「その患者さんが搬送先でお世話になっているではないか。夕張市のコストは下がったとはいえ、他の自治体にとっては負担が増しているのでは」と疑問を投げかけた。

 これに対して森田氏は「170床あった時代の夕張市は“社会的入院”が非常に多かった。19床は病床があるから病院にいても施設にいてもいい。入院させないというより、本当の希望は何なのかが大切。ご家族も一緒にとことん突き詰める。きちんと会話や判断できる人のほとんどは“家がいい”と言う」と述べた。

「薬を減らすマニュアルはない」「高齢者の病気は治らない前提で対処を」

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 森田氏は病床数削減についても言及。自著『うらやましい孤独死 』のカバー写真を引き合いに「このおばあちゃんは生まれつきの小児麻痺のためほとんど歩くことができない。けれど鹿児島の田舎で一人暮らしをしている。生まれてからずっと外を出歩くこともほぼなく、半径100メートルに行くのがやっと。バスや電車にも乗ったことがない。生まれ育った父と母と兄弟、家で最期まで生活するのが彼女の願いだ。医療介護を提供する者としては、彼女の願いをどう叶えられるかを考えていく。そこにはコストをかけてもいいけれど、結局はかかっていない」と述べた。

 平均寿命と健康寿命の差を比べると、男性で約9年間、女性で12年間“健康ではない期間”がある。森田氏によれば現在の病床数は半分程度まで減らせるという。医師の立場からすると入院するだけで医療費は増えるが、「本当は患者さんとか家族の希望も聞いた上で医療側が判断しなければいけない。しかし、現実的には医者側がほぼ判断している」と、入院の判断関する現状に言及した。

 これに関連してパックンは「地方の小さな病院はお医者さんがそのまま経営者という場合もある。だから報酬と診察の結果が関係ないかたちにしたほうがいい。ビジネスではないほうがいい」と指摘した。

 森田氏は、大量に処方される薬への疑問を投げかけるとともに、「高齢者の病気は治らない前提で対処を」という提言についても述べた。

 「減薬は大変重要な問題だが、医者は投薬を減らしてくれない。血圧がこのくらい上がったら薬を足すなど、医学教育では足す方向のマニュアルはあるが、減らす方向はほとんどない。自分は試行錯誤で患者の薬を少しずつ減らしているが、高齢者の血圧の薬を切っても血圧はほとんど変わらないのが実情だ」

 「例えば認知症やタバコの肺気腫など高齢者がかかりやすい病気は、基本的には薬でピシャッと治らない。長い目で見れば100%人間は死ぬ。老化の階段をだんだん降りていく時に、医療がどのように関わるか。病気を治そうと思えばどんどん薬が増え、入院してしまうかもしれない。そこを諦めるのではなく、本人・家族・医療従事者と一緒に受け入れていく作業をやっていくと医療費がほとんどかからない。それが夕張のモデルだ」

(『ABEMA Prime』より)

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