特殊な性的嗜好にどう向き合う? “魚癖”持つ芸人「女性への性的興奮はないけど恋愛感情はある」当事者の悩みとは
【映像】井上さんが「とても好き」と興奮 大きめの魚が跳ねる動画
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 「特殊な性癖というだけで腫れ物扱いされる」

 小児性愛者などによる性犯罪が問題視される昨今。誰にも迷惑をかけず妄想で楽しんだり、自制ができている人でさえ、変人扱いをされるのが“特殊性癖”だ。その対象が人間ですらない場合、より異常と思われる傾向もある。

【映像】井上さんが「とても好き」と興奮 大きめの魚が跳ねる動画

 お笑いコンビ『マリオネットブラザーズ』の井上大生さんは「魚が跳ねるところに興奮する」と話す。「ピチピチしていないとダメ。活きがいいのが好き。生きている感覚があったほうが好き」と自身の“魚癖”を明かした。

 今は芸人という職業柄、性的な好みを笑いに変えているが、学生時代は周囲と違うことを恥ずかしく感じ、誰にも言えなかったという。当事者の多くは周囲に隠しているのが実情だ。そこで『ABEMA Prime』では、井上さんと精神科医をゲストに、特殊な性的嗜好との向き合い方を考えた。

なぜ特殊な性的嗜好? “魚癖”の当事者に聞く

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 命が尽きる直前の魚に性的興奮を覚えるという井上さんの“魚癖”とは。まずは番組で用意した映像を見てもらった。

 小ぶりな魚の映像には「サイズが小さめということもあるのだが、網の中に入ってる状態だとごちゃついて見えてしまう」とイマイチな反応だったが、次にブリなど大きめの魚の映像を流すと、「これはとても好き。凄く体がしなって、曲がる。暴れてからの弱りかけが好きなので、これをずっと映していてほしい。周りにいる漁師さんには触らないでいてほしい」と説明した。具体的にどこで性的興奮を覚えるのか。

 井上さんは「陸に打ち上げられ、跳ねている状態の魚が凄く好き。水の中で直前まで力強く泳いでいた魚が陸に上げられた瞬間、何もできずにジタバタ動くしかない状態に興奮を覚える」と明かした。

 「物心ついた時にはこうなっていた。テレビで釣り番組が流れている時にドキドキした感覚があったのは覚えている」と目覚めた時期に言及。人間が同じように逃げられない状態でバタバタしていたら?という問いには「興奮することは絶対にない」として、女性に対して性的興奮を感じることも「一切ない」と答えた。

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 なぜ魚だけが対象なのか。これについては「自分は本能の部分で、生き物の自由を奪いたいという一種の支配欲がある。だけど、愛玩動物や人間に向けてはいけないので、理性の部分で矯正していったのだと思う。かといって虫だと無機質に感じ、あまり命の感じがしない」と自己分析。日常ではYouTubeなどで、”釣り”などと検索し、魚の映像を見ていると話す。

 一方で、自らが釣りに出ることはないという。これは「漁業を営む人や趣味で魚を釣っている人がいる。僕が行ったら、自分の性的嗜好のために命を消費していることになる。それは絶対避けようと思い、映像だけで済ませている」との理由からだ。

 では、人と魚が一体化した人魚はどうか。この点には「もともと好きだったが、理性で”人間の部分は排除したほう”が良いという刷り込みで魚だけになった。言い方は悪いが、魚は命を奪うようなことが日常的に行われている。だから罪悪感を覚えることなく、唯一好きになれたのだと思う」と説明する。

恋愛や結婚、家族観は?

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 芸人として活動する井上さんは、自身の性的嗜好については「いじってほしい。性癖を喋る仕事は今回が初めてではなく、いろいろな場で喋っている。周りの芸人さんがいじってくれたり、お客さんが笑ってくれることがすごく楽しい」とオープンにして笑いに変えている。一方、プライベートでは「むやみやたらに言うべきではない」との思いから、アルバイト先の関係者などには公言していないそうだ。

 「僕はこれで不自由を感じたことがほとんどない」と、今は“魚癖”を治そうとは思っていないが、かつては悩みも抱えていた。学生時代に周囲が恋愛をする中、「当時はK-POPやAKBが流行っていたが、女性に対してそういう目線を持っていないので、話に入れない。“誰々がかわいい”“誰々がドラマに出てこんなシーンがあった”と男子は盛り上がるが、話題に入れないのが悩みだった」と振り返った。

 また「家族には恥ずかしくてあまり言えていないが、多分バレている。芸人になる時に、“結婚や一般的に描かれる幸せのルートに行くことはできない”と父親には伝えた。だから芸人をやることを許してもらえている部分はある」と述べた。

 恋愛や結婚、家族についてはどう考えているのか?井上さんは「家族を持つ幸せに対する憧れはある。家族を作るなら体外受精を選ぶしかないと思っている」と家族観を語った。また性的な興奮はないものの、女性に対して恋愛感情はあると明かし、「高校時代には彼女がいたが、僕が手を出さなかった。キスすらしなかった」と自身の性的嗜好が原因で別れた経験も語った。

社会はどう向き合うべき?

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 『はりまメンタルクリニック』院長で精神科医の針間克己氏は、こうした性的嗜好について「変えることは基本的に難しい」と説明する。

 嗜好の許容範囲について「理性は大事だが、人によってその基準は様々。性嗜好をめぐってアウト・セーフかの話をする時、“行動に移さなければ良い”というロジックは正しい。だが、問題は本人に行動している意識がなくても周囲から見ると”行動だ”といえるパターンだ。例えば、何も手を加えてはいないが、じっと見ているなどがある」と指摘。客観的な線引きは難しいとした上で、「強姦罪の扱いが変わって議論が進んだように、同意がない相手との性的な交流・関係をもつことは全てアウト。だから、例えば電車の中で直接触っていなくても、後ろにじっと立っている人はアウトだ」と具体例をあげた。

 井上さんは、現在の心境について、「専門家の意見を聞けたことが貴重な経験になった。昔ほど性癖を言うことが恥ずかしくない世の中になっているのはありがたい。周りの男芸人がナンパや合コンに時間を費やして芸を磨くのを忘れ、破滅していくパターンをたくさん見てきた。ある意味、僕は有利だ。今は人に迷惑をかけない状態で落ち着いているので、それが良いことだと思っている。特殊な性的嗜好を持つ人はコミュニティや居場所を作ることが一番良い解決法だと思っている」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

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