“未成年同士の性行為”で17歳少年逮捕…必要なのは規制?性教育のあり方は? 「“寝た子を起こすな”と言われるが、寝っぱなしでは餌食になる」
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 10月19日、富山県の青少年健全育成条例違反の容疑で逮捕された17歳の少年。条例は「何人も青少年に対し、みだらな性行為、またはわいせつな行為をしてはならない」と、18歳未満の性行為を禁じていて、警察は少年が18歳未満の少女に対し、未成年と知りながら性行為をしたため逮捕したという。しかし条例には、罰則は青少年には適用しないという規定がある。富山県警は「少年の状況をふまえて身柄拘束の必要性があると判断。刑を科すことはできないが、保護処分を付すために逮捕する必要性があった」としている。

【映像】「逮捕する必要性があった」富山県警の説明

 SNSには「罰則なしなら逮捕は不当では?」「何人もというなら男女両方逮捕じゃないの?」という声や、「これ、恋愛禁止条例ということですか」と条例自体への疑問も。性交経験の低年齢化が進む中で、規制のあり方、そして、性教育はどうあるべきなのかについて『ABEMA Prime』で議論した。

■なぜ逮捕? 純愛とみだらの境界線は? 

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 今回の事件について、弁護士の二宮英人氏は「免責規定の文言が『罰則は適用しない』というだけで、行為自体が犯罪ではないとは言っていない。こういった形で事件にしたり、逮捕するということは絶対に駄目ではないという解釈もある」と説明。未成年同士の性行為については「不同意性交、不同意わいせつは今年の7月13日から施行の改正法で処罰される形になった。それまでは、各都道府県の青少年健全育成条例違反で処理をしていた」と話す。

 なぜ条例で各都道府県が決めていくことになっているのか。「元々は、そこまで重いものとして捉えていなかったが、海外では児童を守らなくてはいけないという傾向が非常に強い。日本でも同じような基準で捉えていこうということで、今回のような法律ができ、厳しく処罰する方向で最近は動いている」と答えた。

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 一方で、「純愛」を証明できればみだらな性行為には該当しないという。「お互いの両親が交際を知っている、真剣な付き合いだとみんながわかっていれば、あえて事件にはしない。基本的には本人たちの主張だけでは通らない」。

■性教育に存在する「はどめ規定」

 性教育には「はどめ規定」が存在する。小学校5年理科では「人は母体内で成長して生まれること」は教えるが「受精に至る過程は取り扱わないものとする」、中学校の保健体育では「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠までを取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする」と、文科省の学習指導要領で規定されている。

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 年間100回超えの性教育講演を行う、助産師の櫻井裕子氏は「学校で教えてもらいたいと考えている保護者の方が多いと私は感じている。性交について教えづらく、口にも出しにくい。そもそも学校の先生も保護者も教育を受けていないものを伝えることの難しさから、できれば自分は伝えたくないという言い訳にはどめ規定が使われていると感じることも多くある」と話す。

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 それに対し、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「つまり文科省の政策で歯止めがかかっている」とした上で、「今回のケースはわからないことが多い。青少年育成条例も地域ごとに結構細かくシチュエーションが違ったりする。逮捕されたら必ず有罪になるわけでも、起訴されるわけでもない。これで憶測が広がったり、未成年同士なら女子も逮捕しろみたいなところまでいかず、落ち着いて判断して欲しい」と呼びかけた。

■「“寝た子を起こすな”と言われるが、寝っぱなしでは餌食になる」

 性行為を18歳未満で経験した人は16.6%、中学以下で経験した人は5.2%いる(日本財団「第39回18歳意識調査」を元にABEMA Prime集計)。

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 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「中高生は年頃的に、特に男子は『早く経験したい』みたいなことを、本気で友達同士で言っているわけだ。相手の気持ちよりも、自分が早く経験したらなんか偉いみたいな雰囲気が充満している。性教育があればそこはもう少し啓蒙されるのではないか」との見方を示す。

 柴田は「女子校もそういう雰囲気があった」と同意し、「今はお金をかけなくてもネットで性的なコンテンツをすぐに見ることができる。正しい知識がないと、“これが性犯罪なのか”ということを認知できない。性交するにあたってのリスクを理解できていない」と指摘。

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 二宮氏は、ネット上で得る知識は断片的なものだとし、「わかりやすいところで盗撮が増えた。昔はカメラも巧妙なものが作られていて、一般の人が盗撮することはなかったが、今は携帯で誰でもできてしまう。そうすると、そんなに悪いことじゃないのかなと子どもたちは思ってしまう」と警鐘を鳴らした。

 今年4月から、全国の小中学校で「生命(いのち)の安全教育」が進められている。教材の主な内容は“水着で隠れる大切な場所は見せたり触ったりしないようにしよう”という伝え方でプライベートゾーンを守ること、性暴力やデートDVの危険性、SNSの距離感などがある。しかし、性交や妊娠についてははどめ規定同様、教材の中で取り扱っていない。

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 櫻井氏は「性暴力抑止のために、文科省が性教育と言わないで伝えたいという工夫だ。しかし、性交について取り扱わないのはそのままなので、謎が多い。この教育もそうなのだが、禁止・抑制の色がすごく濃い。それで行動を制限できるかというと、何の効果もないことはもう明らかだ。それよりも、起こった出来事にどう対処するかや、対処するための知識やスキルを磨くこと。子ども同士でしゃべると間違った方向に行くという意見もあるが、何か起こった時に助け合う力もついていくと思う。“寝た子を起こすな”と本当にずっと言われているが、本当に寝ているのかと。逆に寝っぱなしだったら餌食になるかもしれず、そこは正しい知識が必要なのではないか」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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