ハーバード大等で広がるデモの背景に「反体制」と「パレスチナへの共感」 専門家「アメリカの学生は欧米の身勝手な外交を理解した上でイスラエルと自国に対して怒っている」
【映像】アメリカの名門大学で広がるデモ

 ハマスとイスラエルの衝突が始まってから1カ月あまり。アメリカ国内では反ユダヤ主義、反イスラム主義双方の緊張が高まり、ヘイトクライムが急増している。

【映像】アメリカの名門大学で広がるデモ

 ハマスの襲撃以降の2週間だけでも反ユダヤ主義による被害は300件を超え、去年の5倍近くに。反イスラム主義による被害報告は800件近くに及んでいる。

 10月14日にはイリノイ州シカゴ近郊でパレスチナ系の6歳の少年が大家の男に刺殺される事件が発生。大家の男は「イスラム教徒は死ななければならない」と叫んでいたという。10月31日にはニューヨークでコーネル大学の男子学生(21)が大学のインターネット掲示板に「ユダヤ教徒向け食堂を銃撃する」と投稿し、逮捕された。さらに11月5日にはロサンゼルスでデモに参加中のユダヤ系男性が転倒し翌日死亡。殴打された可能性があるという。

 こうしたアメリカの大学で急激に広がるデモ活動について、現代アメリカの政治・外交が専門の上智大学教授 前嶋和弘氏は「アメリカの学生たちは、声を上げていくと世界が変わるかもしれないと考えているが、このような学生たちの動きは、アメリカの歴史を見てもあまり前例がなく、ベトナム戦争以来かもしれない」と述べた。

 また、アメリカ政府がイスラエル支持を明確に打ち出す中、反ユダヤ主義・反イスラム主義の双方において憎悪感情が広がっている理由について、前嶋氏は「アメリカは20〜25%を占めるキリスト教福音派を中心にイスラエル支持であったが、若者、特に非白人の若者たちの『イスラエルがやってることこそまずい』という声が大きくなってきている。こうした状況は歴史的だと思う」と説明した。

 アメリカ国内においては、ハーバード大学、コロンビア大学、ペンシルベニア大学などのキャンパス内における反ユダヤ主義の学生デモが発生し、それに対して、大学側が厳しく対応する姿勢を示している。。自由な議論が行われるべきキャンパスで、大学側のこうした規制の背景にあるものは何なのか?

 前嶋氏は「大学側にとっては、ユダヤ系実業家の企業や卒業生らからの寄付金の問題もあり、経営的な側面からもイスラエルに対して否定的な若者に対して特に厳しく押さえつけている。大学は『親パレスチナ、親イスラエルどちらのデモもやめてくれ』と打ち出しているが、対応の仕方は平等ではなく、特に反イスラエルにはかなり敏感だ」と実情を語った。

 さらにアメリカの学生が積極的にデモを行う理由については「実はアメリカの学生は世界の大国がイスラム諸国などに対して行ってきた身勝手な外交や二枚舌外交の問題をよく理解している」と述べた上で「一つは『反体制』だ。若者は歴史的経緯を理解した上で『大国であるアメリカ・国連は何をやっているんだ』と訴えている。もう一つは『パレスチナへの共感』であり、イスラエルとアメリカに対して怒りを持っている」と説明した。

 アメリカにおける世代間のギャップや分断については「特に30歳より若い層がイスラエルに対して否定的になってきている。人口の比率においても若者層は非白人が多く、今後アメリカ社会は変わっていくだろう。デモなどの一連の動きは『これまでのやり方ではいけない』という若者の運動でもあるのだ」と述べた。

 慶応義塾大学の特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「アメリカの学生がよく学んだ上で、『国際社会・大人たちしっかりしろ』という声をあげているのに、それを高圧的に止めようとすること自体が、ガザ地区の問題そのもの。力を持った大国が“自分たちが作った世界の正義の基準”が危ういから蓋をしてきたわけだが、賢い自国の大学生たちがそれを指摘すると、それに対しても蓋をしようとしている」と懸念を示した。。

(『ABEMAヒルズ』より)
 

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