将棋の藤井聡太棋王(竜王、名人、王位、叡王、王座、王将、棋聖、21)に伊藤匠七段(21)が挑戦する棋王戦コナミグループ杯五番勝負が2月4日、富山県魚津市の「新川文化ホール」で開幕局が行われ、129手までで持将棋が成立した。プロ入りから初めての持将棋となった藤井棋王は「こちらの工夫が足りず、結果として『伊藤七段の手のひらの上』というような将棋になってしまった」と振り返った。
全八冠を手中に収める藤井棋王が、2016年10月のプロ入り以来公式戦で初めて持将棋が成立した。初防衛を目指す藤井棋王に、初タイトルを狙う伊藤七段が挑戦する注目の“同学年シリーズ”。開幕戦は藤井棋王の先手で角換わりになり、伊藤七段が「用意していた作戦だった」とハイペースでの進行となった。
藤井棋王は「こちらの玉が先に上部に(上がったことが)こちらの主張かなと思っていましたが、うまく後手に手厚い陣形を作られてしまったのでもう少し深い認識が必要だったかなと思います」。伊藤七段は「香車を打たれて飛車角交換になったあたりから先手玉が寄るという感じではなくなったので、後手としては持将棋を目指しました」と方針を明かした。
互いに少しでも踏み外せばバランスを大きく崩す将棋とあり、伊藤七段は「(自身の)後手玉が入玉するまで時間がかかる展開なので、かなり神経を使いながら指していました」。藤井棋王は「こちらの工夫が足りず、結果として『伊藤七段の手のひらの上』、というような将棋になってしまった」と一局を振り返った。
対局は午後5時35分に伊藤七段が「持将棋ですかね」と発声し、藤井棋王も「はい」と応じて持将棋が成立。タイトル戦では指し直しではなく引き分けとして扱われるため、スコアは両者ともに0勝0敗1分となった。タイトル戦開幕局での持将棋は、1991年10月に行われた竜王戦七番勝負の谷川浩司竜王ー森下卓六段(いずれも当時)以来。伊藤七段は過去に1度持将棋の経験があるものの、藤井棋王は初となったが「全く意識はしていなかった」と語った。
波乱の出だしとなった注目のシリーズ、第2局は2月24日に石川県金沢市の「北國新聞会館」で指される。
◆持将棋 双方(少なくとも片方)の玉が敵陣3段目以内に入り、どちらも相手玉を詰ます見込みがなくなった場合を指す。両対局者の合意によって成立し、玉を除く大駒1枚を5点、小駒1枚を1点として数え、両対局者の点数が各々24点以上ある時は、持将棋となる。公式戦では千日手と同様に指し直しとなるが、タイトル戦は「引き分け」として扱われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)