将棋の藤井聡太棋王(竜王、名人、王位、叡王、王座、王将、棋聖、21)が2月24日、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われた第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局で、挑戦者の伊藤匠七段(21)に94手で勝利した。最終盤では、藤井棋王が鋭すぎる寄せを披露し見事勝利。その終局図は、中継で聞き手を務めた山根ことみ女流三段(25)も思わず「美しい…」とした後に言葉を失うほどだった。
開幕局では持将棋が成立し、互いに「0勝0敗1分」で迎えた第2局。金沢対局で“シリーズ初白星”を手にするのはどちらか、大注目を集めていた。第2局は挑戦者の伊藤七段の先手番で「角換わり」の出だしに。互いに研究範囲とばかりに早いスピードで指し進められると、伊藤七段は強気の攻めを展開。しかし、「午前中に踏み込んで行った手がまずかったかなと思っています。ちょっと軽率な一手かもしれないと思っていました」と振り返っていた。
それでも両者の指し手は止まらず、盤上は昼食休憩を前に終盤戦に突入。藤井棋王は「手が広い局面で、どこが急所か少し考えてもわからなかった」とようやく手を止め、1時間28分の長考に沈んだ。「途中から攻め込まれて受ける展開になって、基本的に玉が薄いので自信がなかった」とした藤井棋王だったが、「玉形の差がかなり大きいので、少し縮められればという意図で」と後手陣に迫る一手を選択。互いの玉頭が戦場とあり緊張感が高まる中、わずかに伊藤七段がペースを握ったかと見られていた。
「自信がなかった」という藤井棋王だったが、盤上を制圧するべく中央地点へ角を打ち付ける攻防の一手を着手。自陣に迫る竜を制圧するとともに陣形をみるみる再構築すると、あっという間に形勢を押し戻してみせた。藤井棋王は「竜を押さえ込んで、こちら(後手)が多少受けが利く形になったので、少し前の局面と比べると流れはいいのかなとは思っていた」とし、ギアを切り替え先手陣に迫っていく。隙無しだったはずの先手陣を攻略すると、瞬く間に鋭く寄せ切って白星を手にした。
優勢を築いてからわずかの間に美しい詰み筋を作った終局図に、ABEMAの中継に出演した山根女流三段は、「美しい…」と感嘆。「まるで詰将棋のような。藤井棋王の将棋は、最後綺麗に詰みますよね。まるで詰将棋作家のように、詰め将棋を完成してしまうという…」とし、圧倒されていた。解説の星野良生五段(35)も「詰将棋の本に乗っていそう(な図)」と同意。自他ともに詰将棋好きを認める山根女流三段とあり、「私、こういった問題解いたことあります!」とテンションがアップした様子だった。
圧巻の寄せの技術と美しい終局図を披露した藤井棋王。ファンからも「芸術作品」「きれいですね~」「かっけー」「作家だろ」「実戦で詰め将棋を完成させる」「きれいな棋譜が残る… まさに名人」と多くの反響が寄せられていた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)