勝利目前の状況に、喜びが抑えきれなかったのか、それとも何か…。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」エントリートーナメントの模様が5月4日に放送された。スコア2-2のタイで迎えた第5局は、チーム渡辺・山崎隆之八段(43)と、チーム広瀬・杉本和陽五段(32)が対戦。最終盤、勝利が濃厚になった山崎八段の口元が緩んだ瞬間を仲間が見逃さず、控室で総ツッコミが出るという珍シーンが誕生した。
山崎八段は時折自虐を込めた独特なワードセンスによるトークと、序盤からどんな手を指すかわからないという自由奔放で天才的な指し回しが光る実力者。ヒューリック杯棋聖戦では15年ぶり2度目のタイトル戦出場を決め、藤井聡太棋聖(竜王、名人、王位、叡王、王座、棋王、王将)への挑戦が決まっている。天才棋士に対して、山崎八段の変幻自在な将棋がどこまで通用するか、将棋界のホットな話題になっている。
その山崎八段は、渡辺明九段(40)にドラフト会議で2度抽選を外した後の1巡目として指名されてチーム入り。第1局は相手のリーダー広瀬章人九段(37)に敗れたものの、それほどショックを感じさせずに第5局に登場。大会初出場の杉本和陽五段(32)と対戦した。
先手・杉本五段が中飛車、後手・山崎八段が居飛車の対抗形でスタートすると、序盤は比較的穏やかになり、がっちりと陣形を整えることに。中盤の競り合いに入ったところで、自然と山崎八段がのびのびと指せるような流れに。ただここからさらに局面が難解になると、両者の間で形勢が二転三転とする激戦に突入した。
それでも、混戦から山崎八段がスッと抜け出すと、控室で見ていた岡部怜央四段(25)が「頼む!よし!自動勝ちに入った!」と興奮すると、渡辺九段も「これは読み切っています。顔的に。あはは」と笑い始めた。ABEMAの将棋ソフト「SHOGI AI」も、山崎八段の勝率を90%以上と示したところで、盤面を真剣に見ていたはずの山崎八段が、ふと視線をあげてにやり。詰み筋でも見えたのか、このリアクションを控室も見逃さず岡部五段が「笑ってる!なんで、なんで」、渡辺九段も「簡単すぎて。詰みが(笑)」と突っ込んでいた。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)