期待が高まる一方で、建設の遅れや膨らみ続ける費用など、課題が山積。そんな中、いまネットを中心に波紋が広がっているのが「石のパーゴラ」。
「パーゴラ」とは、庭や軒先に設置する木材などで組んだ「棚」。つる性の植物を絡ませて日よけなどに使われる。
「石のパーゴラ」は、万博の会場内の休憩所周辺に作られる予定で、イメージ図を見ると、人間の頭より大きな石の真ん中にワイヤーのようなものを通して頭上に吊るしているのがわかる。
これを複数本設置することで、日よけにするというものだ。設計コンセプトについては「大阪城にも使われた瀬戸内産の石を、会期中は空へと持ち上げ、日除のパーゴラとして活用(公式サイトから一部抜粋)」と記されている。
この「石のパーゴラ」に対して、ネットでは「斬新だ」などの声が上がる一方…
「ホントに落ちてこない?大丈夫?石が割れたりしない?」「絶対下に入りたくない。冷や汗で涼しくはなりそうだけど」「隙間だらけで雨よけにもなりそうにない。日よけとしても微妙」
など安全性を懸念したり、機能面を疑問視したりする声が多く上がっている。
『ABEMAヒルズ』が、2025年日本国際博覧会協会に問い合わせたところ、「安全性については、構造設計の専門家が計算を行ってチェックしています。その上で、民間の指定確認機関に工作物(パーゴラ)の審査を受けており、建築基準法に基づく構造安全性に適合しています。石そのものの強度については、引張強度試験を行うとともに、原寸大のモックアップ(試作モデル)を作成し、耐久性の確認を行っています」と回答した。
なお、強度試験の内容については「公表する予定はない」としている。
そもそも、このパーゴラは本当に日よけになるのだろうか?
この問いに博覧会協会は「屋根のように全体が覆われているものではないが日光を遮り、地上付近に日陰部分を作り出す効果がある」と回答している。
万博は公式サイトにおいて、大阪・関西で開催する魅力のひとつを「日本の様々な分野における次世代の若いクリエーターが、自らの才能を世界に向けて発信できる」と記しており、この休憩所エリアの設計についても若手建築家の応募の中から選出したものだ。
安全であっても安心できないのではという声もあるが、この案を選出した理由は何か。
博覧会協会は、「パーゴラ」は休憩所の建物とは違って屋外に設置されている、としつつ「『多様でありながらひとつ』という会場デザインコンセプトの下、SDGs達成につながる個性豊かで魅力的な博覧会施設の創出を図るものとして選出されています」と回答している。
世界各国から多くの来場者が見込まれる大阪・関西万博。過去に例を見ない「石を吊るしたパーゴラ」。世界からどう評価されるだろうか。
今回、物議を醸した「石のパーゴラ」。
これを評価する上で「デザイン」という言葉の定義が肝要になると、アプリ開発・広告・アートなど幅広い範囲で活動するTHE GUILD代表の深津貴之氏は指摘する。
「デザインはいろんな意味のある言葉だが、僕なりの解釈、あるいは大きな解釈としては『何かの意図や目的があるときに、その意図や目的が実行されたり達成されたりするような仕組みを作ること』という意味だと思う。日本ではデザインというと比較的ビジュアルやカッコ良さを指す言葉のように捉えられているが世界的にはどちらかというと『設計』という言葉に近い」
では、今回のパーゴラはどのように評価すればいいのだろうか?
深津氏は「元の意図が何かによる。例えば元の意図が『市民が憩いの場として親しめる休憩所を作る』であれば、デザインとしては機能を達成できていないかもしれない。だがデザインの意図が『万博において誰もが見たことのないものを作り話題にする』や『使われたことのない素材の新しい使い方を発表してその可能性を模索する』あるいは『賛否両論のあるテクノロジーを会期中に問題なく執行し、日本の技術・安全性をアピールする』であるならば、これはデザインとしてしっかり仕事をしている設計ではないか。個人的には見に行きたい」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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