【写真・画像】裏金議員の非公認は石破総理に“メリットだらけ”? 専門家が分析する「選挙」「支持率」「党内掌握」への影響 1枚目
【映像】裏金議員の非公認が石破総理に“メリットだらけ”の理由
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 石破茂総理(自民党総裁)は、収支報告書に収入を記載していなかった自民党議員の一部を次の選挙で公認しない方針を示した。解散総選挙が目前に迫る中、この決断が各方面に与える影響とは。日本大学危機管理学部教授/東京科学大学特任教授の西田亮介氏に聞いた。

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 石破総理の裏金議員非公認という決断について、西田氏は「一番大事なことは、そもそも国会議員は“全国民の代表”だということであって自民党内部の問題はその次の話だ。そのうえで、どう振る舞うべきかが問われている。世論では、石破総理は改革に出遅れたという印象が強く、自民党総裁選の期間で発言してきた裏金疑惑にどう向き合うのかが注目される中で、この非公認という処分を打ち出したこと自体は非常に重く、インパクトもある」と見解を述べた。

 加えて注目されるのが、処分の対象がどの範囲の議員にまで及ぶのかについて。現状、対象となるのは党内の役職停止などの処分がすでに科されている6人(下村博文元文科大臣、西村康稔元経産大臣、高木毅元国対委員長、萩生田光一元政調会長、平沢勝栄元復興大臣、三ツ林裕巳衆院議員)と見られるが、西田氏は「もう少し(処分の)幅が広がるのではないか」と推測する。
(※9日現在、非公認は12人に)

「例えば、裏金疑惑をかけられたにもかかわらず、衆議院の政治倫理審査会に出てこなかった自民党議員は44人。ただし1名はすでに議員辞職したので、今議員として残ってるのが43人。その43人のうち6人と言われると、『結局ごく少数の象徴的な人たちだけが処分の対象なんだ』と、(世間に)ネガティブな印象を与えるはずだ。それでは政権の求心力に繋がらない」

 石破総理は「説明責任を果たさず、地元の理解が進んでいないと判断された場合は非公認の対象とする」とも述べており、また収支報告書に不記載があった議員は比例代表としての復活はなし(重複立候補禁止)としている。この処分内容について西田氏は「ひとえに説明を果たしていないという状態にも段階があり、対象範囲に幅を持たせていること自体は妥当だ。ただ、実際に『地元の理解が進んでいない』ということをどのように判断するのかについては疑問が残るし、まさにそこが権力闘争だ。処分の対象者が6人にとどまるのか、もっと増えるのかで、世間に与える印象が相当変わる」と語った。

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 一方で、当然自民党内からは「処分は終わっているのにこんなことをしたら二重処分だ」などと不満が噴出。西田氏も「おそらく自民党が(次の選挙で)現在の議席数を維持できないということは衆目の一致するところ。内閣支持率と自民党の政党支持率がどちらも厳しい状況で、議席がどこまで減るのか。単独過半数を維持できるのか、公明党との連立でも過半数を割り込むのかといった“読み合い”が行われている中、重複立候補ができれば選挙区で落選しても復活当選できるが、それが難しければその議員は議席を失ってしまうわけだから、やはり厳しい(制裁)」と心情を察する。

 こうした対応について、西田氏は「石破総理が裏金疑惑の議員に“厳しい制裁を科す”ことにはメリットがある」と指摘する。

「支持率が低い状態での船出となった石破政権にとって、世論に『石破政権、頑張ってるな』という印象を与えるには、ここで制裁を厳しくする必要がある。一方で、処分を厳しくすると当然党内の亀裂は広がってしまうが、裏金疑惑の議員たちはもともと“反石破”が多い。であれば、(選挙に落ちて)議会に帰ってこないほうが石破政権・総裁にとっては党内を掌握するうえで都合が良いとも言える」

 目下、石破総理が党内を掌握できておらず、権力闘争が起きているとして、「もはや誰も見たことのない世界」だと西田氏は表現する。

「表立った“派閥”が無くなった結果、票の取りまとめや(党内で)意見を一致させることが難しくなっている。言い方を変えれば、それぞれの人たちがそれぞれの意思で動くようになっている。バラバラだ。もし石破総理が(裏金疑惑の議員に対して)厳しく当たるのであれば、『やばい、これはちゃんと総裁の言うことを聞かなければいけない』と思う人が増えるかもしれないし、『いやいや、もう石破さんではやってられない。早く選挙で負けた責任をとったことにして次の人に代わったほうがいい』と思う人もでるだろう。そのせめぎ合いだ」

 自民党内でもすでに混乱が広がっているが、では野党はどのように動くべきか。西田氏は「野党にとっては、もうちょっと時間がほしかっただろう。特に裏金疑惑の議員の選挙区で、例えば立憲民主党と日本維新の会の間で、どちらかの党で候補者が決まっていない場合は新規の候補者を出さないようにするなど、できる範囲である程度の協力をするといわれる。時間があればもっと調整できたはずだ。それでも野党にとっても千載一遇のチャンスで、攻め時にしたいはず」と予測した。

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 ANNの世論調査によると、「自公政権の継続を期待する」と「政権交代を期待する」、それぞれ回答した人が同じ38%となった。西田氏はこの結果について「難しいところではあるが、大事なことは、先日行われた自民党総裁選と違って、選挙で投票するのは一般の有権者だということ。また鍵を握るのは公明党だ。公明党は裏金問題に関しては自民党と足並みを揃えていない。一貫して厳しい姿勢を示してきたが、今回の選挙でも裏金疑惑の議員に“独自の基準”で推薦するかどうか判断すると言っている。明らかな逆風ななかで大きな固定票が期待できる公明党の支援を受けられないとなると、裏金疑惑の候補者の選挙戦はますます厳しくなるはずだ」と分析した。

(『ABEMAヒルズ』より)

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