プログラム終盤、少年たちと犬たちの絆が深まる
プログラム開始から2カ月が経ち、皆がめきめきと上達していた。そんなとき、ある事件が起きた。ピーターを担当するハヤトが、少年院内の規則を破ってしまったため、個室の単独寮に送られてしまったのだ。プログラムは、急遽中止になってしまった。
ツカサは「不安ですね。フーカが動きを覚えているか。できたことが、できなくなってしまうのではないか」と心境を語った。
交友関係を見直すためのノート
プログラムがいつ再開するかわからない中、ツカサは自分の部屋でこれまでの交友関係を見直していた。「自分」と書かれた〇のまわりには友人や知人などの名前がびっしりと書かれていた。「どこが危険だから近寄らないほうがいいか、自分や先生を通して見つけて、関わる人を考えようという目的でやっている」。
友人からの誘いで犯罪に手を染めた少年も多く少年院を出た後の交友関係の見直しは重要な課題。「書くまでは、付き合う人は誰でもいいと思っていたけど、やっぱり人は選んだほうがいいと思う」。
1週間後、ハヤトが帰ってきた。反省しているのが認められ処分は無く、プログラムも再開できることになった。実は、少年院から相談をされ、プログラムをいったん止めてハヤトを待つと伝えたのは、鋒山さんだった。
「犬の訓練をする中で、他者とのコミュニケーション能力や、自分の担当犬を訓練する責任感、我慢強く取り組む忍耐力、犬ができないときにどうするかという問題解決をする能力、チームワークなど、一番自分にとって気づきや成長と思える何かが1つでも2つでもあれば、それが一番の成果」(鋒山さん)
9月末、プログラムも終わりに近づき、ツカサのフーカにかける声にも優しい言葉が増えた。「フーちゃんゆっくりいくよ。フーちゃん駆け足いくよ。フーちゃん頑張れ」。
最終テストを受けるツカサとフーカ
さまざまな訓練を経て、いよいよ最終テストの日を迎えた。皆が見守るなか、精一杯の力を出し切る。「ジャンプ」に苦戦していたフーカだったが、この日は難なく成功。これにはツカサも思わず「おお」と驚いた様子だった。
そして、最終テストの結果は、ツカサ・フーカペアとハヤト・ピーターペアが86.5点、ショウ・ベルペアが85.5点。3人とも100点中85点以上の高得点をあげることができた。
3カ月に及ぶプログラムを振り返って、ツカサは「ストレス耐性が身に付いた。自分が犬と関わることで良くなっているのがわかる。やっぱり我慢強さ。ぐっとこらえるところはこらえて」と語った。