そして、話は戻る。今年7月、井岡はWBA&IBF同級2団体統一戦でWBAスーパーフライ級王者のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)に0-3の判定で敗れた。この敗戦について、Takaが持論を述べると、井岡がその考えに共感を示す。
「一翔のボクシング人生の中では第2ステップに突入した。勝つことも負けることも、意味合いとしては一緒になっていく気がする。(この発言で井岡がTakaに握手を求める)今までだったら負けることが怖い。ダメという考え方で走ってきたと思うけど、負けることにもきっと次がある。今まさに、その壁にぶち当たってるんだろうなっていう」
同級生として、第一線を走ってきた二人だからこそ分かり合えることもある。井岡はロスでの復帰戦について「いい意味で自分らしくなかった。いろんなものを背負ってるのが結果に出て、パフォーマンスとしてもよかった。ただ…俺たちの世界は結果が全て。敗者が美化されることはないと思うし、結果を残したものが全てだからキレイごとを言うつもりはない。何が悔しいかって、自分が勝ちたかったから悔しいのであって、自分がやってきたことに悔しいかといえば、それは胸を張れる。勝ち負けは自分の優越感。でも世の中に対して証明しないといけないのは、もちろん勝つこと。世界チャンピオンで居続けること。ある方に前回負けて泣いているときに『なんで泣いてるの?結果に生きてんじゃねーよ』と言われて。その言葉を聞いて、勝ち負けじゃなくて、自分がどうやりきるか。俺はどうしたい? まだ戦いたい。誰と闘いたい? 前回負けた相手と戦いたい――」
決意を固めた井岡は敗戦直後、旅先からダイレクトリマッチをマネージャーに懇願したという。その話を聞いたTakaは「なるほどね」と頷き「やられたらやり返す。それで負けたことにも意味があるし、勝ったことにも意味がある。俺も音楽をやっていて一番つらい時期だった。今までは試行錯誤の連続だったけど、試行錯誤って何のためにやっているのか? ファンのためと言いつつも自分のため。もちろん勝ち負けは興行的にもスポーツの世界でも絶対になければいけないもの。そこを理解したうえで、今回の試合は楽しくやって欲しい。戦うことはもう知っている。そこに年を重ねてきた経験値をすべて乗っけてパンチしてほしい。楽しんで」
自らに必要以上のプレッシャーをかけて戦ってきた井岡。「人間的な考えじゃなくて、動物的な直感でも全然いいと思う」ある意味開き直った井岡一翔がどんな戦いを見せてくれるのか。「その考え方を信じて試合をしてほしい」と期待を寄せるTakaはもちろん、ファンも13度目の大みそかで迎える歓喜の瞬間に期待している。