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「憂流迦は35歳だけど、プロレス界では新人」「現時点で早くも「これでいいんだ」と満足しちゃってる」

――2023年の元日以来、丸2年ぶりのNOAH日本武道館大会に出場となりますが、どんな思いがありますか?

中邑 ありがたいですよね。日本に帰って来れるチャンスをいただけるのは。帰ってくるたびに、「俺、アメリカいたんだ」っていうような、ちょっと不思議な感覚になるんですよ、未だに。

――渡米して8年以上経ってもそうなんですね。

中邑 毎年帰ってくるたびに見る東京や日本は、自分がいた頃とはけっこう変わってるんで、それすらも新鮮ですし。かつ日本武道館で試合ができるというのは、いい感じがしますね。やっぱり、思い入れのある試合が何度もそこで行われてきたんで。

――中邑選手はデビュー戦から日本武道館ですもんね。数ある思い入れのある武道館の試合の中でも、グレート・ムタ戦には特別な思いがあるんじゃないですか?

中邑 そうですね。グレート・ムタとの試合は自分の中でも大きな分岐点にもなるものでもあったし、それまで自分が培ってきたプロレスの集大成でもあったなっていう気はします。

――今年11月にSMACK DOWNで復帰してからの和を基調としたおどろおどろしいニュータイルは、どこかムタを彷彿させます。

中邑 ここに来て毒が回ってきて、自分の身体の中から染み出してきたんですかね。もともと自分の感情をコントロールする方ではあましたけど、今はそれがもっと鮮明に、むごたらしい、いやらしい、残虐な部分もリングに上がる時は染み出せるようになったのかな、と。

――そんな中邑選手にとってもターニングポイントとなったグレート・ムタ戦は、MMAファイターだった佐々木憂流迦選手にも多大なる影響を与え、彼をプロレスの世界に呼び込んだ試合でもありました。憂流迦選手が真輔vsムタ戦をきっかけにプロレスデビューしたことについて、どんな思いがありますか?

中邑 僕はもともと憂流迦が(格闘家として)駆け出しの頃から「プロレスやればいいじゃん」とは言ってましたからね。あいつはビジュアルもいいし、そこそこ身長もあるしね。格闘技をちんたらやるんだったら、早くこっちに来なよっていう声はかけてましたから。

――早くからプロレスラーになることを勧めていたわけですね。

中邑 ただ、そこから国内では敵なしになって、UFCに参戦して。ニューヨークに住んでやってるっていうのを聞いて、「おっ、こっちの道でしっかりやってるんだな」っていうことは感じていました。それで僕がニューヨークに行くたびに声をかけて、一緒にメシを食ったり、練習したり、あとアメリカで暮らす上でのちょっとした手助けなんかもしていましたけど、あいつがRIZINに出るようになってからは、あまり連絡を取ってなかったんですよ。

 それが、ムタ戦の時に日本武道館にひょっこり顔を見せたんで。興味がなきゃ来るわけがないから、なんとなく感覚としてこっちの世界に来るのかなと思って、「おまえ、いつ来んの?」と声はかけましたね。

――憂流迦選手にとっては、まさに心を見透かされたような言葉だったようですが。35歳という年齢で、事実上プロレスに転向することについてはどう感じましたか?

中邑 「そんないってたんだ?」と(笑)。後輩の年齢はまったく気にしてなかったから「20代じゃなかったんだ」と。まあね、途中コロナもあったから。みんな3年損してるんで、3つ引いてあげてくれ、と(笑)。

――憂流迦選手もそれだけMMAでしっかりとしたキャリアを積んできたということですよね。

中邑 そう、だから別に格闘技で培ってきたものがリセットされるわけじゃないから。ただ、その本質的なものをどうプロレスに落とし込めるかというのは、それぞれのセンスでしかないので。あいつのそのセンスがあるかどうかは、やってみないとわからない。

――対戦が決まって、憂流迦選手のプロレスの試合はご覧になられましたか?

中邑 それがですね、試合が決まってもまだ見てないですね。X(旧Twitter)で流れてきた試合のクリップ、ショート動画なんか目にしますけど、ちゃんと見ようかなと思ったら、「この地域ではご覧になれません」とか出ちゃうから(笑)。

――国境の壁に阻まれて(笑)。

中邑 ここでVPNかますのもめんどくせえしなって。だからクリップでしか見てないですけど。パッと見、プロレスの技術的にはアドバイスできる部分や、「ここはこうしたほうがいいよ」と言えるものはありますけど、そんなもんは僕に言われるよりも自分で気づかなきゃいけないことだから。

――全体的な印象としてはどうですか?

中邑 なんか、ちょっと感じたのは「ちやほやされてんだろうな」と。だって普通に考えて、まだデビュー1年も経ってない中で中邑真輔と日本武道館でやれる。その前にはタイトルマッチもやって、(GHCナショナルの)ベルトも一瞬巻いた。毎回、それなりに注目カードとして扱われていると。それに対して(周りのレスラーは)誰も何も言わねえんだって。

――嫉妬されていないのか、と。

中邑 憂流迦は35歳だけど、プロレス界では新人じゃないですか。NOAHには憂流迦より先にプロレスやってるヤツが何人もいるのに、なにも言わねえのかよって。それは不思議というか、「おまえ、気ぃつかわれてんじゃねえの?」と思って。それが「ちやほやされてるんじゃねえか?」っていう言葉になりましたね。

――中邑選手が新人時代、若くしてメインに抜擢されたり、トップのベルトを巻いたりした時は風当たり強かったですもんね。

中邑 自分がそういう態度も取ってたので、それはしょうがないと思うんですけど。そこらへんは不思議だな。「それが今風なのかな」と思ったりしますけどね。

――中邑選手自身は、もちろん憂流迦選手をちやほやするつもりは毛頭ないわけですよね。

中邑 べつにそれが優しさとかそういうわけでもないし。今回は対戦相手ですからね。なんか、あいつが「教えてもらいたい」みたいなことを言ってたのをどっかでみたんだけど、「はぁ?」と思って。「お前、なんか勘違いしてんじゃねえか? 闘うんだよ」って。現実的な部分で言えば、すでに35歳。うまくはやってるとは思いますけれど、現時点で早くも「これでいいんだ」と満足しちゃってる感が感じ取れちゃった。

 もちろん後輩としてかわいい部分はありますが、この業界に入ってきたからには。ましてや対角線上に立った以上、容赦はしねえぞ。リング上でもリング外でも。

――憂流迦選手も中邑選手との試合が決まり、相当な思いがあるとは思いますけど、感慨にふけてる場合じゃないぞ、と。

中邑 「情緒不安定です」「どうしたらいいんでしょう、ぼく」とか、そういうコメントを見て、「ハードル下げようとしてやがるな、言い訳作りか?」って。「だったらお前じゃなくていいんだけど?」と思うんですよ、俺は。

 元日に日本武道館試合ができるのは日本人としての光栄なことですから、それはもちろんやりますよ。でも対戦相手がそんなこと言ってるなら、べつに憂流迦じゃなくてもいいんですけどって。そんな感じですね。

――2年前の元日日本武道館の相手がグレート・ムタで、今回、佐々木憂流迦戦のオファーがきたときはどう感じましたか。「まだ、顔じゃない」みたいな思いはありました?

中邑 憂流迦と自分には一応ストーリーはありますから。まあ、薄っぺらいですけど。

――薄っぺらくはないと思いますけど(笑)。

中邑 「やる意味はあるな」と思うんで。だから 受けたわけですけど。いざ決まってみたら、ちょっとね。これもXのオススメでNOAHのポストが流れてきて、そのショート動画を見てみたら、こともあろうにあいつがキンシャサを使っている。「あー、ないな」と思いましたね。

――12.19後楽園ホールでの試合で、ご丁寧に「イヤァオ!」からのキンシャサを使ってましたけど、それは違うだろう、と。

中邑 そこのセンスが「やっちゃってるな」って。もう迷走して行き着くところまで行っちゃったんだな、おまえって。なんかむしろ、哀れに感じます。

――武道館では「佐々木憂流迦」をぶつけなければならない試合ですもんね。

中邑。 そう。「なんだよ。プロレスごっこやってたのかよ」って。あいつに関しては、そんな感じですね。

文/堀江ガンツ

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