中国で「国宝」と呼ばれるパンダは世界中の人気者として愛されてきた。世界各国にいるほとんどのパンダは中国から貸与されたもので、中国は国々との関係を深めるため「パンダ外交」として展開してきた。
【映像】中国パンダ界のトップアイドル「ホワホワ」(動画あり)
一方で、パンダの繁殖に貢献する和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドでは、中国との共同研究が30年の節目を迎えた。これまでパンダが国や人々にもたらしてきたものとは何か。朝日新聞記者・吉岡桂子氏が取材した。
■中国でかつてないほどのパンダブーム
パンダの街、中国・四川省では、大型ビジョンや広場のバスなど街のいたるところにパンダのモチーフが溢れている。この街がある四川省には、上野動物園で5年半ものあいだ愛されたメスのジャイアントパンダ「シャンシャン(香香)」がいる。
およそ2年前、中国への返還が決まり日本を旅立ったが、今は四川省の雅安にある中国パンダ保護研究センターにいるという。敷地内に入ると、大勢の人々の視線の先に変わらず元気そうなシャンシャンの姿があった。
さらに同じ四川省には、近年爆発的に人気でホワホワの愛称で知られる「ホーホワ(和花)」がいる。耳が小さく丸い顔をしており、のんびり笹を食べる姿が大人気。こうした姿は中国のSNS「Weibo」に数多くアップされ、中国パンダ界の空前のトップスターだ。
来園者たちは「動きがとろい。ゆっくり動いているところとか、争う感じが全くないのが好き。彼女の温和な感じ、食べ物を奪われても反撃しないところなどが心に刺さった」「三角のおにぎりみたいな姿で全く動かない。とても可愛い。ずっと並んだ甲斐があった」などと絶賛していた。
吉岡氏は中国でのパンダの人気について「中国でパンダは国宝として愛されてきたが、パンダを見るために行列ができるほど大人気になったのは『ホワホワ』がきっかけだったようだ。動作がゆっくりしていてかわいらしく、攻撃的じゃない。中国のような競争が激しい社会、またコロナで傷ついた心が癒されるなどの理由から(SNSの)動画で広がった」と説明した。
経済効果については「1日何十億円の経済効果があるという情報もあり、成都市は2024年にホワホワを『名誉観光局長』に任命した。施設内に入ってくるお客さんが爆発的に増えて、私自身も2時間並んだが、こんな行列は今までなかった」とした上で「パンダをきっかけに、他の名所に行き、食事や宿泊などさまざまな波及効果がある。しかも90年代は外国人観光客が中心だったそうだが、今は9割以上が中国各地からのお客さんになったと言われている」と語った。
■「パンダ外交」の狙いとは?

