伊藤匠叡王(22)への挑戦者を決める第10期叡王戦本戦トーナメント2回戦が2月12日、東京・千駄ケ谷の将棋会館で行われ、藤井聡太竜王・名人(王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)が戸辺誠七段(38)に勝利した。本局は鮮やかな詰みが話題となったが、ABEMAで解説を務めた中村太地八段(36)は終盤で藤井竜王・名人が見せた“自然な一手”に注目。「深く読まないと指すことができない奥深い一手だった」と感服の表情を見せていた。
藤井竜王・名人にとって、“八冠奪還ロード”となる叡王戦本戦トーナメント2回戦。ベスト4進出がかかるこの一局では、振り飛車党の実力者・戸辺七段との激突となった。
振り駒の結果、先手は戸辺七段に決定。初手合いとなったこの一戦で、戸辺七段は得意の中飛車を志向した。対する藤井竜王・名人も堂々と受けて立ち、二枚の銀を繰り出して対抗した。解説を務めた中村八段は、「短手数の将棋だったが、水面下の変化はとても複雑で中終盤は濃密な一局だった。また、藤井竜王・名人の強さが光り、印象的な攻めの手も数多かった」と総括。序盤戦の駒組み以降一気に激しさを増したが、光ったのは絶対王者の指し回しだったと語った。
そんな一局で、中村八段が選んだマニアックポイントは、終盤に突入した52手目で藤井竜王・名人が見せた竜で香車を取る一手。一手争いのスピード勝負となっていた局面だったが、「竜で香車を取る自然な手に思えるが、この直前に先手も竜を作っていて持ち駒に銀桂を蓄えていることから、後手にとっては先手の攻めが来ることが目に見えている怖い局面。しかし、その中でじっと香車を補充しておくというのは、相手に手を渡しても大丈夫という見切りの一手でとても印象に残った」と語った。
さらに、「この藤井竜王・名人の選択以外の手だった場合は互角という状況だったが、竜で香車を取る選択はAIも“最善”と示しており、この一手は後手がリードを保つということだった。このあたりの読みはさすが藤井竜王・名人だなと思わされた」と感服しきりの様子。「ギリギリのところを見切っているというのが後手の指し回しの素晴らしいところ。すべてを見越したような一手で、香車を補充する自然な一手だが、深く読まないと指すことができない奥深い一手だった」と藤井竜王・名人の水面下の複雑な読みを解説した。
“面白い将棋を指すこと”を自身の目標に掲げる若き王者が見せた好局。挑戦権獲得へ、また一歩前進を遂げた藤井竜王・名人だったが、「こちらの玉が薄い将棋なので、中盤から終盤にかけて距離感を測るのがむずかしい将棋だった」と冷静に分析していた。
次戦は挑戦者決定戦進出をかけて、準決勝で鈴木大介九段(50)―糸谷哲郎八段(36)戦の勝者と対戦する。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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