■拡散したタイトルは?専門家「不適切だと思う」

境界知能の主な特徴
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 今回、拡散したタイトルについて専門家はどう受け止めたか。青山学院大教授で日本発達障害連盟理事の古荘純一氏は「不適切だと思う」と指摘した。「『罪の意識がない』のは、正常の人からはそう見えるかもしれないが、境界知能の当事者からすると、魅力的な場面に出くわした時、この行為をすれば次にどういう結果が起こるか分からなくて行動してしまい、結果的に非行や犯罪行為になることもあり得る。『人の心の痛みがわからない』もそうだ。同じものを見ても認識が遅れたり、うまく組み立てられない。場合によってはパニックを起こしてしまう。それなのに『IQが70台』という数字で括られていること自体も、すごく不適切。『矯正教育』というのも上から目線。同じ知能だとか一部の人に対して指導するということだが、もともと土台が違う人に対して上から目線では、うまくいかないと考える」。

 そもそも、この「境界知能」という言葉を、どう受け止めるべきなのか。「まず『知能』というものは定義されておらず、だけども一般的には『知能はいいもの。高ければいい』という認識があり、それで使っている。IQは、きれいに70、100、120と出てくる。高ければいいという先入観があるところに数字が出てくるので、これはラベリングに非常に都合がいい。境界知能の人は、人口の14%、日本人だと1700万人だが、血液型のA型、B型といったラベリングと同じ。単に数値が低いからといって、一方的に攻撃対象になるのは、非常に世の中として、当事者の方につらいこと。それをレッテル貼りに使う、事件の当事者が境界知能の数字だったと結びつける風潮は非常に好ましくない」。

■境界知能の人々の生きづらさ
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