■境界知能の人々の生きづらさ

なんばさん
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 境界知能である当事者たちは、記事の拡散についてどう思ったのか。YouTuber・ライターでIQ84のなんばさんは、取り上げられた少年に対して、教育や環境の影響があったと考える。「『人の痛みがわからない』というのは、境界知能だけの問題ではなく教育や、劣悪な環境に置かれて、そうなってしまった人もいると思う。記事の捉え方が(境界知能が)悪い方にされてしまっているのは、当事者としてはちょっと悲しい」。また、難関私立大学を卒業した経歴を持つIQ71のKさんも同じだ。「私もこの記事を見た時は、この記事に書かれている当事者の方と、私の人生だったり価値観だったりがあまりにも違うと考えた。やはり『境界知能』と一括りに言っても、私たちは別の生き物。勘違いされるような記事だったり、タイトルだったりが拡散されることは、非常に残念だなと思う」。

 なんばさん、Kさん、2人とも幼少期から何かしらの生きづらさは感じたものの「境界知能」であることを知ったのは、大人になってからのことだ。この受け止め方も個人差があり、2人の間でも大きくことなる。「ショックを受けた」というのはKさんだ。「自分では全く自覚がない状態で、学生時代を長く過ごした。本当にお医者様や家族から『あなたは境界知能だよ』と言われるまでは正直、普通の人間だな、周りと変わらないなと思って生きてきた。知った後は、やはり落ち込んだ。『境界知能』という強い言葉は、ズシッと重みがある。お医者様に言われること自体が、ちょっとショックな経験だった」。

■自分が境界知能とわかり「ホッとした」
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