自・公・維・国を足しても3分の2にいかない
参院選を見据える中での政権運営について日本大学危機管理学部教授/東京科学大学特任教授の西田亮介氏は「石破総理は自民党総裁としてもとても難しい舵取りを強いられてきた。時期的にも今回の参院選、それから都議会議員選挙も気になるところだ。にもかかわらず、いわゆる宙吊り国会、少数与党の元でなかなか自分たちが考えてきた政府与党案が通らない状況。当初予算も29年ぶりに修正が入った。予算修正は政権と与党にとっての失点と解されている」と説明。
政府の方針が二転三転した高額療養費制度については「もともと高額療養費制度は医療費の負担が重くならないようにするもの。実際、病気療養で入院・休業すると例えば勤めている人は大体給料が6割程度になる。その間に医療費の負担がのしかかるととても厳しいことから医療費を収入に応じて『上限額』を定める仕組みだ。それを超える分は国が措置する仕組みだったが、社会保険を全体的に見直していく傾向が強まっていく中で、『自己負担を引き上げてはどうか』という検討が入ること自体は理解できなくはない。だが、当然のことながら、病気療養、特にがんや難病など長期の治療されている方は経済的にも難しい状況であることから強い反発が起きた。野党からも『いかがなことか』ということで声が上がった。その中で『それでもやりきる。引き上げるんだ』と当初言っていたものの、『やはりちょっと難しいんじゃなかろうか』とたじろいだ。当事者団体の声も聞くとやはり反発が強いということで、最終的には全体的に凍結せざるを得ないことになった」と経緯を述べた。
そんな中で、政府の対応に党内からも以下のような批判の声が上がっている。
「党内から反発の声があって立っていられなくなったということだろう」(自民党のベテラン議員)
「党内がゴタゴタするかもしれない。『衆議院を通したものをまた修正するなんてどういうことだ』と不満はある」(自民党の閣僚経験者)
これに対し西田氏は「選挙が近い、特に参議院の改選に相当する人たちからしてみれば、負担が増すような改革には批判が集まりがちだ。物価高騰の中で『手取りを増やすべきだ、賃上げするべきだ』という議論が出ている中で、『医療費の自己負担額が増えるとのはおかしい』という声が出るのは当然だ。そのため『党内だってまとめきれていない』のが現状だろう」と述べた。
このような状況下だが、不思議と“石破降ろし”の声はまだ聞こえてこない。
この点に西田氏は「政治的には極めて難しい状況で、政権運営の難しさは増している。誰も今やりたくないということと、野党の側、特にキャスティングボートを握っている維新と国民民主党は年収の壁対策などを見ても『自分たちの主張が反映される可能性』が高まっている。しかも(議席)数としては維新も国民もそれほど多くはない。政権交代という状況ではないと捉えるなら、むしろ今は政策が通っていくので好ましいということで “奇妙な安定感”が生じているのではないか」と説明した。
「参院選まで石破総理のままで」ということも考えられるのだろうか?
「一般的にはそのように考えられている。だが、衆議院の議席数を見るとそうも言っていられない、国会後半は安心できないという気もしている。今、“宙吊り議会”、衆議院与党少数になっている。予算の成立は衆院の過半数でよく、法案の成立も過半数だが、例えば衆院は通って参院で否決された場合、再可決には3分の2必要になってくる。3分の2は、大体300を超えるぐらいの議席数だが、今、自公だけでは過半数にも達してない状況であるため、“組み合わせ”は複雑になってくる。例えば、自・公・維・国を足しても3分の2にいかないという極めて不安定な状況だ。そうすると、国会後半になってくるとかなり行き詰まってくる可能性がある。法案が成立しにくくなる、あるいは法案の採決に時間がかかるというようなことも考えられる。参院は与党で過半数を超えるが、選択的夫婦別姓のように与党内でもまとまりにくい政策を突きつけられると、石破政権はかなり苦しくなるかもしれない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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