経済的な面だけでも、多くの課題があるオリンピックだが、過去にも国際情勢が大会への参加、不参加に影響した歴史がある。評論家・情報キュレーターの佐々木俊尚氏は「1980年代に当時のソ連がアフガンに侵攻したので、アメリカや日本は1980年のモスクワ五輪をボイコットした。その対抗手段として、1984年のロス五輪に対してはソ連が出なかったという非常に悲しい出来事があった。あまり政治とオリンピックが近づきすぎるのはどうなのかという問題は必ずある」と振り返った。
渡辺氏は、ロシアの選手に対して“ロシア代表”として大会に参加することに、明確な「NO」を示している立場だ。「この間、モスクワに行って20~30人のプレスを前に、ロシアという国は、オリンピックの休戦協定を破ったのだから『ロシアのフラッグのもとに選手が出ることは、僕が国際体操連盟の会長である以上、あり得ない』と、はっきり2度言った」という。ただし選手個人の権利は尊重する。「個人の選手はみんな人権を持っている。彼らの練習をする環境、それから大会に出場する権利は守らなければいけない。ロシアの旗の下では出られないけど、中立の選手としてであれば、我々は最大限の努力をする」と加えた。
■国の威信は背負うべきなのか
