■児童虐待“疑い”で面会制限は誰のため?

 千葉県議会議員の岩波初美氏は、法案に反対する理由として、「『推定有罪』で冤罪防止の視点が欠落」「子どもが人質になり、実際やってなくても親が『虐待した』と認めさせられる」「面会制限が虐待防止になるわけではないため、家族再統合が難しくなるのでは」といった点を挙げる。

千葉県議会議員の岩波初美氏
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 また、「法的根拠はなくても、現実としてほぼ100%面会制限がかけられている」と指摘。「子どもが人質に取られても抗議できない当事者がいる。親が反論すると『反抗的だ』と判断され、報復措置を取られる」と話す。

 岩波氏は子ども側の感情として、「親と長い間引き離されると、子どもは『見捨てられたのでは』と疑う。施設に入っている子どもはそうした感覚を持つようで、戻ってきて初めて『見捨てられていなかった』と安心する」と懸念を示す。

 一方、2〜18歳まで児童養護施設で育った社会活動家の山本昌子氏は、「そもそも保護してほしくても、してもらえない子が多いのが現状だ。SNSで『誤認保護だ』『返してほしい』といった投稿を見て、自分の親だと気づく子もいる。親に追われることに苦しんでいる一方で、親は虐待している意識がない場合も多い。命の危険や性被害を受けていても、依存やマインドコントロール状態にあれば、強制的に保護できない」と指摘。

 また、「子どもが施設に行っても、親との関係が切れるわけではない」とも話す。「説明不足によるすれ違いで、親子ともに苦しむ現状は改善したほうがいい。お互いにとって大切なことを整理するためには、ただ面会制限をかけるだけでなく、プロのケースワーカーが間に入って調整することが必要。さじ加減で決まる現状を、法律できっちり決められると良い」。

 かつて千葉県内の児童相談所の一時保護施設に勤めていた、フリーライターの飯島章太氏は「一時保護には、虐待の疑いを調査するだけでなく、クールダウンの意味もある。児童相談所の1つの課題は、『虐待の疑いがある』と言われて動揺した親のフォローやケアができていない点。そこで『面会制限には法的根拠がある』と説得できるのは大きい」と述べた。

■児相の仕事はどれだけ大変?
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