■維新議員「お金の多寡で医療に差がつき始めるという議論が必要なタイミング」

 こうした状況に、日本維新の会 厚労部会長の阿部圭史衆議院議員は「医療機関の存続、持続可能性という観点からすると心配。ただ、医療改革を進めていく過程で、患者の権利をどうするかなど保険財政との兼ね合いもある。どうバランスをとっていくかは非常に重要だ」との見方を示す。

社会保障給付費と国民負担率の推移
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 そんな中での、「医療費4兆円削減」の3党合意。合意事項は、現役世代の保険料負担含む国民負担の軽減。3党の協議体を設置し、「OTC類似薬の保険給付のあり方見直し」「現役世代に負担が偏りがちな構造見直しによる応能負担徹底」「医療介護産業の成長産業化」などを検討するという。維新の改革案などを念頭に、医療費総額を年間4兆円削減し、現役世代の負担を年間6万円引き下げるとしている。

 阿部氏は「私も医者をやっていたので、どう医療政策を作っていくかを考えるし、やはり存続してもらわなくてはいけない。ただ、国民負担率が5割近いという状況がある中で、医療機関や患者の状況もわかりながらも、生活が厳しい現役世代の視点に立ってやってみようじゃないか、というスタンスで我々は提言している」と意図を説明。

 3党合意の内容に太田氏は「『4兆円』を認めているわけではないが、阿部先生には感謝している」と意外な答えを返す。「ほとんどの国民は“どうやって医療を支えていくか”を真剣に考えたことはなかっただろう。お年寄りは増え、医療に必要なお金もどんどん増えていくのに、現役世代はどんどん減っていく。どこまで切り詰めるか、負担を増やしてでも支えるのか、といったことを真剣に議論しなければいけない段階に来ている。4兆円を減らされたら僕らは生きていけないだろうが、国民が真剣に向き合ってくれれば、そんな簡単に医療費や社会保険料を減らせないこともわかっていただけると思う。例えば、高額療養費の問題で国会が紛糾し、上限引き上げが見送られたが、“それはできないだろう”ということで止まった。個別にいろいろやっていくと、“それもこれも厳しい”ということがわかってくると思う」。

 阿部氏は「高額療養制度の話は最後に手をつけるべきところだったのに、順番を間違えてこれだけ炎上した。我々も4兆円と言い、基本的にはそこを目標としているが、どこから適正化できるかなどは、内部でもちろん議論している」とし、「社会保障は一つひとつの積み上げ。お金の多寡によって受けられる医療に差がつき始めるという、非常に重要な議論をしなければいけないタイミングだ。日本は国民皆保険という理念の下、必要な医療が届くように頑張って支えてきたが、人口動態が変わって厳しくなってきているのも事実。どういう医療をこれから我々は支えていくのか、命をどう考えるのか。これは政治家が考えなければいけない仕事だ」と述べた。

■「改革する前に病院がなくなってしまうかもしれない」 今後の病院経営は
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