機能性表示食品の“制度上の限界”とは?
紅麹問題を受けた消費者庁の機能性表示食品に関する検討会で、安全情報に関する参考人も務めた、国立医薬品食品衛生研究所・客員研究員の畝山智香子氏は“紅麹問題”について以下のように述べる。
「この事件は全体像や長期影響もまだわかっていない中ではあるが、健康被害は近年で最大規模だということだけは確かな状況だ。今も後遺症に苦しんでいる方がいて、厚生労働省への届け出情報もまだ増えている。以前BSE問題が起きた時などは、いわゆる被害者はそれほどいなかったが大きな問題になったため、色々な制度が変わった。それに比べると、被害の割に対応は全然されていないという印象を持っている」
また、機能性表示食品の“制度としての限界”についてこう指摘する。
「機能性表示食品制度は、消費者庁に届け出されたデータを見て、自分で判断しましょうという制度になっているが、実際に機能性表示食品を買うときに消費者庁のデータベースにアクセスして調べる人はほとんどいない。さらに、仮にアクセスして書類を見たとしても、その中身を適切に判断できるのはやはり専門家だけだ。したがって、一般の消費者が適切な情報を得て判断することは、現実としてはかなり難しい」
問題があった企業への対応はどうなっているのか。消費者庁は、「きなり」の販売業者に課徴金約1億円を課したものの、この商品の売り上げは処分対象となった期間だけでも約36億円だ。
「結局利益は企業に残り、ブランドの価値をさほど尊重していなければ“売り逃げ”ができてしまう。抑止にはあまりなっていないと思う」
さまざまな問題がある中でも、機能性表示食品市場は拡大してきた。一方で特定保健用食品(=トクホ)の市場は減少している。
畝山氏はこの要因について「特定保健用食品は、個別の商品ごとに有効性と安全性をそれぞれ審査している。したがって、お金も、商品を開発してから売るまでの時間もかかる。トクホにお金をかけるのが嫌だからということで機能性表示食品制度ができたわけだが、同じような効果を謳うことができ、しかも消費者は特定保健用食品と機能性表示食品の違いをあまりよく理解していない。そういう状況だったら、企業側はより安価に早く売れる方に流れるのがむしろ当たり前で、わざわざお金をかけてトクホにする必要はないと考えるのが自然だと思う。機能性表示食品制度が導入された時に、賛成する側の意見としては『この制度があれば悪いものが淘汰される』というものがあった。しかし結果を見てみると、悪いものが淘汰されたのではなくて、より良いものが取って代わられたという形になってしまっている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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