短期的対策の難しさ…減反政策と根本的な問題

なぜ不足?背景に減反政策
拡大する

 しかし、青山氏は補助を行き渡らせる難しさについて、以下のように説明した。

「例えばガソリンは、実際に補助金で下げているが、業界がいくつかに決まっている。コメは、小売店が細分化されているため、補助を行き渡らせるのが非常に難しいという構造的な問題がある。一方で、消費者側にコメ券を配る案もあるが、給付金以上に事務手続きにお金がかかる。結局、それだったらほかのやり方がいいとなり、検討されないという状況になっている」

 西田氏も以下のような見方を示した。

「消費者にコメ券などを配布する場合には、最終的には市町村の協力が必要になってくる。コロナの時のワクチン接種行政や特別定額給付金を思い起こしてみると、かなり強い負荷を地方自治体にかけることにもなった。
そもそもワクチン接種の方法も、当時は地方自治体に考えさせた。短期間で、消費者に対してクーポンを流通させるのは実は、それほど簡単なことではない」

 コメ価格の問題の背景には、長年続いてきた減反政策がある。青山氏は減反政策について以下のように説明した。

「日本は、コメが余るようになってきて、税金を払ってコメを作らないようにしてもらう減反政策を取ってきた。実は廃止されたが、今でもコメから他のものに転作すれば補助金が払われているため、事実上、減反政策が続いてる。現在も、毎年10万トンずつ減らしていく計画が続いている」

「こうやって生産量を調整し、コメの値段をある程度高く保つというやり方は、需給バランスが崩れる。例えば、凶作やインバウンドでコメの消費量が増えると、値段が跳ね上がる。現在、このやり方が問われており、石破総理大臣は、農家へ直接補填する、余れば輸出するといった方に舵を切るべきじゃないかということを委員会、国会で言っているところ」

「あとは、安全保障上の問題もある。例えば、昨今の関税問題や戦争などで、小麦や大豆の輸入が滞ってしまう可能性もある。そうすると、日本人は何を食べるのかとなった時に、コメだ。備蓄米を放出しても、目詰まりして届いていないということになったら、日本人は飢えてしまう。このコメの問題、流通もそうだし、増産も考えるべきじゃないか。現在、ターニングポイントに来ていると思う」

 事実上の減反政策をスピード感を持って変えることについて、西田氏は以下のように述べた。

「短期的には難しいはずだ。この構造それ自体が自民党にとって集票マシーンでもある。そこに切り込むことができるか。今のような少数与党状態で政権基盤が不安定な中でそれが可能か。内閣支持率が下がってるときに可能かということだ」

「現在コメの生産量は、600万トン~700万トンぐらいだと思うが、これが本当に不足しているのかどうかというのは、実はよくわからない。人口減や高齢化が進むなかで消費量も減っていくトレンドだ。需要が伸びたのが一時的な外れ値なのか、構造的な問題なのか、要は生産量の問題なのか、それとも流通上の問題なのかあまり明確に示されていない。精査が必要だ」

 青山氏も農水省の実態について以下のように述べた。

「基本的には需給で調整してきたが、実際に農水省がどこまで把握しているのかわからない。豊作であっても、(稲が)台風で倒れていたという実態もあるが、把握ができてなかったんじゃないか。今回も備蓄米を放出しても、値段がなかなか下がらないというようなことになっている。コメの流通経路は複雑になってきていて、減反政策も事実上やめたりしていたが、需給調整が限界に来ていると思う」

参院選に向け政府ができることはあるか?
この記事の写真をみる(4枚)