2008年、麻生内閣で石破氏は農林水産大臣に就任。コメの生産を減らして価格を調整する「減反政策」に反対し、コメ増産を訴え、農政改革を進めようとした。

 しかし、この時も「コメ保守派」からの抵抗にあい、頓挫した。減反政策をやめてコメを増産する石破流農政改革は何だったのか。

 元農林水産省官僚で食料農業問題に詳しい山下一仁氏はこう評価する。「至極真っ当。減反というのは毎年3,500億円の財政負担で農家に補助金を与え、コメの生産を減らして、米価を市場で決まる価格よりも高くする政策。それをずっと続けてきた。コメの配給量を1億2,400万人に賄おうとすれば、コメの供給量は1,600万トン必要。ところが、今は減反でコメの生産量を650万トンに減らしている。備蓄も合わせても800万トンしかない。もしシーレーンが破壊されて、食料を輸入できなくなる時に、日本国民は半年以内に全員餓死する。それが減反政策。農林水産省は食料安全保障という目標を掲げながら、真逆のことをやっている」。

 さらに財政面でも構造改革した場合の方が恩恵があるという。「今、毎年20万トンずつコメを備蓄するために500億円かけている。減反の3,500億円の補助金プラス500億円の備蓄米。だが減反をやめるとなると、3,500億円が浮く。輸出をする。それが無償の備蓄になる。そして500億円が浮く。トータルして4,000億円が国民の負担を軽減される。それで影響を受ける人はいる」。

 山下氏の試算によれば、コメが安くなることで経営が苦しくなる農家に対する補助金は1500億円程度。その原資は浮いた4000億円を使うことで消費者にとっては価格が下がり、主要農家にもメリットがあるという。

「主要農家の人達に農地が集積して、その人たちの規模が拡大してコストが下がる。収益が上がるので兼業農家の人たちに払う地代も増える。みんなハッピーになる。それが石破さんが言ってること。ところが、農協というのは全く逆の組織原理。農林省が構造改革的な政策をやろうとすると、必ずJAが妨害する。

ところが、ある時から農水省のなかにもちょっと不埒な連中が出てきた。農協構造改革というのは、農家戸数を減らすということ。農家戸数を減らすと農業票が少なくなり、自民党の農林族の政治力も小さくなってしまう。そうすると自民党の農林族の政治力を使って財務省に予算を要求できなくなる。農水省の予算が少なくなるということは、それを使って天下りが難しくなる。そういう人たちが農水省のなかにも増えて、農政トライアングルという形を作った」(山下氏)

 その「農政トライアングル」に石破総理は進次郎議員を農水大臣に起用し「今しかない」と挑むことに舵を切った

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