今年発売されたマンガ『聞き取りが苦手すぎる男子の日常』が話題だ。ある日のこと、友だちとの会話の内容が理解できなくなった高校生。しゃべる「声」は聞こえるが、「言葉」として聞き取れない症状に悩み、結果として愛想笑いや適当な相づちで、その場をやり過ごす——。
【映像】“LiD”当事者を描いたマンガ『聞き取りが苦手すぎる男子の日常』の一部内容
こうした状況に、実際に悩む人もいる。小学6年生の絵美さん(仮名・11)は、つい先日、聞き取り困難症 LiD(エルアイディー)と診断された。聴力に問題はなく、音は聞こえるのに、相手が何を話しているのか理解できない、つまり「聞こえているけれど聞き取れない」症状を指す。
絵美さんも、授業中の聞き取りや友だちとの会話で困難を抱えている。「文章は最初と最後は聞こえるが、真ん中の重要な部分が聞こえない」。友だちから「人生で一番悲しかったことは何?」と聞かれた際には、「楽しかったこと」と聞き間違えて、「遊園地に行ったことかな」と答えてしまった。戸惑う友だちを前に、「ソフトクリームを食べようとして、全部落とした」という作り話で、その場をしのいだという。
絵美さんが授業で使っている機器は、マイクと受信機がセットになっていて、周囲の音をカットし、教師の声がクリアに聞こえる。しかし、母親は「子ども割がきくが、約20万円と約8万円の15%引き。(購入時に)補助が付いたらありがたい」と訴える。
同じような症状を抱える人は、100人に1人とも言われるが、世間的な認知度は低く、補助も追いついていないのが現実だ。
■複数人が同時に話す会議が困難 家庭でも「テレビの声を拾ってしまう」
