■当事者が望む支援 周囲の理解や配慮が支えに

 LiD当事者のゆきさん(仮名・27)は、「雑音が多い場所での会話」や「複数人での会話(同じ音量で聞こえる、発言者が誰かもわからなくなる)」「長い話」「突然話しかけられる」「電車の発着時の構内のアナウンス」などが聞き取れないという。

LiD当事者のゆきさん
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 電車の運転見合わせを例に挙げ、「駅員や車掌のアナウンスの時に隣を電車が通過すると、聞き取れず状況把握ができない」と話す。また、コロナ禍では「マスクに加えて、パーテーションで声がこもってしまう。薬局や窓口のように、すぐ隣でも別のやりとりが行われていると、他の会話と混ざってしまうことが多かった」と振り返る。

 ゆきさんは高校時代、休み時間に雑音に耐えられず、部屋から逃げ出した経験がある。ただ、健康診断で聴力検査を受けると「異常なし」だった。過去にコールセンターやスーパーで勤務していたが、雑音が多い職場で聞き取りが困難に。そして去年「LiD」と診断された。

 当事者にとっては、「静かな場所へ移動」「話しかける時に名前を呼んだり肩を叩くなどし、『あなたに話す』ということを明確化」「複数人での会話は1人ずつ発言」「大事な話は1対1で」「ゆっくりはっきりした声で簡潔に」「身振り手振りを交えて」「文字にする」といった周囲の理解や配慮が支えになる。

 ゆきさんは診断を受けた当時、スーパーマーケットで働いていた。「カミングアウトには抵抗なく、まわりに助けを求めやすくなった」という一方で、「耳栓やノイズキャンセリングイヤホンの着用許可を求めたが、『サボっていると思われる』と許可が下りなかった」とも語る。最終的に、「LiD当事者が作った“コアラマーク”を使って、『ゆっくり話してください』と示したバッジを自作して着用した」という。

■LiDの要因は 専門家「まずは耳鼻科で検査を」
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