「本当に来て良かったです」と涙
親族を代表して沖縄からフィリピンにやってきたのは盛根康彦さんら。日本国籍を回復した2人と、初めての対面を果たした。
康彦さんが取り出したのは、100年以上前に撮影された姉妹の父、蒲太さんの写真だ。
姉妹は写真に顔を近づけキスをした。その様子を見た康彦さんは「本当に来て良かったです」と涙を流した。
日本国籍回復の知らせはさらに続いた。両親の婚姻届がなく、調査が難航。新たに見つかった両親の結婚式の写真を、取材班に最後の望みとして託したコダイラ・チエコさんも、長野県出身の小平留雄さんの娘と認められ、その願いは叶った。
一方で、カンバ・ロサリナさんは申し立てが却下。日本国籍を回復することはできなかった。これまでの調査に分かっているいることは、父親の名前、カンバ・リタ。そして、戦前、鳥取県出身の神庭利太という人物がフィリピンに渡った記録が残されているということ。
2人が同一人物だと証明できれば…取材班は鳥取へと向かった。
玄関先の果物は…
取材を経て、山陰地方には多くの神庭姓がいることが判明した。
同じ「神庭」でも心当たりはないという中、「行ってみるといい」と紹介されたのが大山のふもとにある集落。
訪ね回ると「リタさん」を知っている人が見つかり、「リタさん」の晩年の写真も見つかった。地元の老人会で旅行に行った時のものだ。漢字では「神庭利太」。フィリピンから戻って以降、周囲との付き合いは少なく、1人静かに暮らしていたという。ただ、利太さんを知る人は、子ども時代の印象的な記憶を話してくれた。
「あの辺に家があって入り口にこれくらいの道にばーっと植えてあった」
利太さんの玄関先になっていたのは、フィリピンに親しまれているという小さな柑橘系の果物。大切に育てられていた。
そして、利太さんの甥とも会うことができた。利太さんがフィリピンに渡っていたのは間違いない。日本に帰ってきて、竹とりをしながら暮らしていた。優しい人だった。この出会いが、利太さんの娘の日本国籍の回復に繋がれば…
カンバ・ロサリナさんは94歳。残された時間の中で、日本国籍回復への申請をもう一度。
「父のことが大好きなんです。だから父の家族に会いたい」

