この日、初めて卒検に挑む1人の女性がいた。大学2年生の竹原舞衣さん(20)は、生まれも育ちも浅草で、幼いころから人力車の引き手に憧れ、「いつか自分もなりたい」と8カ月前に東京力車の門をたたいた。「浅草が大好きなのが一番にあり、中学生くらいの時から思っていた」と振り返る。
研修では叱られながら学ぶ日々で、現実の厳しさを突きつけられながらも、必死に夢を追う。研修中に書いたメモを持ち歩き、「定期的に振り返り、『こういう時にこう言われたな』と思い出してやっている。これが3冊目で、いつもここ(カバン)に入れている」と話す。
そんな彼女の卒検は、すべての業務が終了した、18時30分から行われた。「緊張しているが、やりきれることをやりきろうと。あとは笑顔でがんばる」(竹原さん)
審査項目は、お客へのお声がけ、走行の安定性、安全面への配慮、正しい観光ガイドなど。100点満点中70点以上で合格だが、合格者は10人に1人の狭き門だ。
まずは「お客へのお声がけ」からテスト
